第44話

そんな賑やかな昼食を終えた四人は、今度はクラスごとの展示を見に行こうということになり……



「やっぱりコレは外せないよね!」



天野が先頭を切って向かったのは、二年生のクラスがやっているおばけ屋敷。



「まぁ、二年がやってるヤツだしな。そんなに怖くはないだろ」



村田も割とリラックスした様子で頷いて、



「美紅はこういうのは平気なのか?」



おばけの存在を信じていない右京は、隣の美紅を心配そうに見る。



右京の記憶が正しければ――二人で映画を観に行った時、ホラー映画だけは絶対に嫌だと言っていたから。



「うん。全然へーきだよ」



しかし、美紅は即答。



しかも、台詞がいかにも棒読みっぽい。



「美紅……?」



明らかに様子のおかしい美紅の顔を、右京が覗き込もうとしても、



「へーき」



美紅はそれしか言わない。



そんなやり取りをしている間に、天野・村田カップルが先におばけ屋敷へと入っていき、



「うわーっ!」



「ぎゃーっ! 意外と凝ってる!」



怖そうながらも楽しそうな悲鳴を上げているのが聞こえてきた。



「……よし。行こ、右京くん」



完全に表情が消え失せて感情を読み取れない美紅が、右京の手を引く。



その手は少し汗ばんでいて、ひんやりとしていて……そして小刻みに震えていた。

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