第40話

そんな彼の唇の端にたこ焼きのソースと青のりが付いていて。



「右京くん、こっち向いて」



美紅が、ポケットから取り出したティッシュペーパーでそれを優しく拭き取る。



見るからにラブラブな様子の二人の邪魔をしないように、天野と村田は階段の端をそっと通って、美紅と右京の数段下の階段に並んで腰を下ろした。



「はぁ……これでまだヤッてないって言うんだから、お前らマジですげーよな」



村田の突然の下ネタ発言に、紙パックのフルーツ・オレを飲んでいた右京が、



「ごはっ……!」



動揺して盛大に噴き出し、それが彼の数段下に座っていた村田にかかった。



「うわっ! きったねー!」



村田は慌てて立ち上がり、



「良かった。食べ物は無事」



天野は自分の分の食べ物の無事を確認し、ホッと溜息をついた。



「良くない! 俺の制服が汚れたんだぞ!」



村田が自分の体を指差して、



「あ、ごめん。今ハンカチないや」



今に限らずいつもハンカチなど持ち歩いていない天野は、自分のポケットの中身を確認することすらせずに言い放つ。



咳き込んでいる右京にハンカチを手渡した美紅は、



「あの、村田先輩。これ、良かったら……」



ポケットティッシュを村田へと差し出した。



「あ。ありがと」



素直に受け取った村田は、それで自分の制服をふきふき。

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