第24話
アクツ先輩が少し歩を進めたため私もそれに続く。部屋のドアの前では一旦立ち止まっては教えてくれた。
『203号室 明津 芽吹』
『206号室 茅野 琳』
『202号室 比護 ナツキ』
『205号室』
教えてもらった順に頭の中で少しずつ整理させていく。名前のシールがない階段横の部屋は私。まあ、どうせすぐいなくなる身だ。名前シールがなくてもすぐわかる。
そして、共有スペースから出て真っ直ぐ進んだ二階の一番奥————階段の真ん前にある部屋までたどり着いた。
「んで、ここが夜霧空の部屋な。さっき口喧嘩してた赤い髪のびしょーねん」
空とあんな風に言い合う女子なんて初めて見たよとおかしそうに言う明津先輩に思わず苦笑い。
私もなんであんな風に言い合ってしまったのかわからない。でも明津先輩が少し表情を和らげてくれたからまあ、いいか。多分。
少し顔を上げて札を見る。
『201号室 夜霧 空』
……夜霧、空。なんだかライトノベルに出てきそうな名前だ。ミステリアスな雰囲気な感じで。似合わないなー。
「はっきり言うね祐希。空の前でそんなこと言わないでな。ちっちゃいことですーぐ怒るから」
「……口に出てましたか、気をつけます」
自重してくれ、私の口。そう思いながら口元を片手でやんわり覆う。
「そーらー。お昼ご飯ですよーっと」
「んーわかった」
明津先輩の呼び掛けにすぐ応じ、部屋から出てきた夜霧空。
だが私の顔を見るとあからさまに嫌そうに歪める。おうやんのか。
「アバズレ女がなんで芽吹と一緒にいんの」
「部屋割りを教えてもらっていたんだ、チビワ」
「うるせーアバズレ」
「私はアバズレじゃない顔面詐欺」
「ばーか!」
「馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞばーか」
「それだとお前もバカってことだろ!」
「さっきのなし、ノーカン」
「ずりぃぞ! じゃあ俺もさっきのなし!」
「二人とも落ち着けーい、時雨からまたゲンコツされるよ?」
「……」
明津先輩の言葉にチビワはダッシュで通路を駆けていった。足速っ。
余程時雨さんからのゲンコツが嫌らしい。ゲンコツを好き好んでくらいたい人もなかなかいないとは思うし当たり前の反応ではある。
それにしても。
「無駄に足速いですね」
「ちっこいから風抵抗が少ないんじゃない?」
「ああ、なるほど」
「聞こえてるからな‼」
明津先輩の言葉に納得していると、どうやらまだ共有スペースに入っていなかったようで、毛を逆立てて怒る猫のような真っ赤なチワワが声を張り上げてきた。
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