第4話
どれぐらい時間が経っていたのだろうか、カフェがディナータイムに入ろうとしていて店員さんたちが照明を切り替えていた。
ほんのり明るかった室内がトーンダウンし、灯り一つだけでも随分違った印象になった店に驚きを覚える。
そっか……お店が変わったんだ、あれは夢だったんだ、なんて現実逃避をしたくなったけれど、でも現実はあたしから遠のくことがない。
いつまでも暗い影を背負い、いつまでもあたしの後ろを尾け回す。
「……お会計…」
一口も口を付けていないコーヒーだけを置き去りに、私は無意識のうちに伝票が置かれてたであろう場所に手を這わせていたが、
ああ、そっか……啓が払っていってくれたんだ…
そんなことも覚えてないなんて…
どうかしている。
店を出ても雨はやんでいなかった。
「降水確率って外れるんですね。傘お貸ししましょうか?」と親切な店員さんが申し出てくれて、
「いえ、折りたたみ傘を持ち歩いていますので」とお断りをした。
嘘だった。
折りたたみ傘なんて持っていない。
借りてしまったら、またこのお店に返しにこなければいけない。
そうしたら、さっきの光景が蘇りそうで…
怖かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます