27曲目 初MCありライブ決定 2

 掃除の時間、丁度廊下掃除を担当していた歩は廊下に貼られたポスターを見て箒を持つ手を止めた。プライベートを尊重してくれているのか、歩は学校で平穏且つ高校生らしい学校生活を送れていた。勿論ファンですと声をかけられることはあるものの、写真を求められるどころか盗撮の話も歩には届いていない。そんな中、皆良い人たちだなと呑気に掃除をしていた歩が見つけたのが目の前に貼っているポスターだった。スターラビットのライブを宣伝するポスターで真ん中には今、箒を握っている自分がいた。

「いや、アイドルじゃん、こんなの完璧」

 ポスターにいる自分を見て歩は呟いた。キラキラさせた笑顔でアイドルを心から楽しんでいるのがよくわかる。

「MC、頑張らないと」

 歩は意気込むと同時にスマホを取り出してポスターの写真を撮った。遠巻きに歩を見ていた女子生徒達は歩の嬉しそうな横顔に頬を赤らめ、歩を推していくと誓った。



 大学からの帰り道、商店街を歩いていると買い物中の主婦層の女性達から熱烈な視線を受け、大貴は首を傾げた。地元で着々と知名度を上げているとはいえ、まだテレビに出ている等したことがないので、スマホ環境に順応な若者からの支持が圧倒的に多かったスターラビットであったが、今大貴に熱烈な視線を浴びせているのは自分の母親よりも年上の人達だった。なぜだろうかと辺りを見渡すと至る所に自分達のショッピングモールライブ出演のポスターが張られており、大貴は納得した。

「俺達も成長してきているといいうことかな」

 大貴はスマホを取り出し、ポスターの写真を撮った。

「皆にも見せよう。既に誰かがやっているかもしれないけど」

 大貴は小さく笑った。



 クラスの予定表やクラス通信に交じって貼られているスターラビットショッピングモールライブのポスターに和哉は口を開けたまま固まっていた。『不器用きんぐ』の公開以降愛想のない和哉の態度は全てツンデレに近いものだったと知った和哉のクラスメイトは全面的に和哉を推していた。

「流石にはずいんだけど」

 クラスカレンダーにはライブの日に和哉のメンバーカラーである黄色のマッキーペンで丸が書かれており、和哉は両手で顔を覆った。そんな和哉をクラスメイトは微笑ましく静かに見つめていた。和哉のクラスメイトは和哉のアイドル活動を応援するために盗撮等の迷惑行動は一切行わない誓いを結び、他のクラスや学年の生徒がそのような行為をしないようにと和哉の知らない所でボディーガードのようなことを行っていた。そして、こっそりクラスカレンダーも映る画角でポスターの写真を撮った和哉にこれからも和哉を守る活動をしようとクラスメイトは心から誓った。

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