第4話
出勤時間は知坂の方が早い。朝8時きっかり。これは同棲して三年変わることはなかった。
「じゃ、行ってくる」
「うん、いってらっしゃい」
「お前も頑張れよ」
「うん」
ねぇ知坂。
いつから私のこと名前で呼んでくれなくなった―――?
私は”お前”って名前じゃないんだよ。
私は最近幸せと不安とで、まるでできそこないのカフェラテのようにごちゃまぜだ。
バイトのカフェの昼休み、私はカフェの事務所兼休憩室になっている部屋で持参してきた手作りお弁当を食べながらスマホを取り出した。
ロック画面に知坂と私が寄り添って写っている写真をにやつきながら眺めロックを解除する。
今朝の小さな疑問は会わない時間の間に払拭されていた。私って単純??
そう言えば私の誕生日、あと二週間後だ。知坂は毎年小さいがケーキを買ってきてくれて、いつもは行かないちょっと高めの料理屋に連れて行ってくれる。今年こそは………プロポーズ!?キャー!
だって私来年三十だよ?
もういい年ごろよね。知坂も33歳だし、同棲だって三年している。お互いいい歳だ。彼だって絶対そのことを念頭においてる筈。
知坂からメールが入ってないかな?と淡い期待を寄せつつ、しかしそれは期待にだけで終わった。
代わりに友達の由佳からメールがあった。
”久しぶり、
今日―――?
また急だな。
どうしても話したい事って何?もしかして加納くんと別れることになったとか!
そうだったら私ははどう反応すれば!?
何でも後ろ向きなこと考えるのって私の悪い癖だよね。もしかして加納くんと結婚するって言う報告かもしれないし。
その日の午後はあまり仕事に身が入らなかった。私の働いているカフェは午後8時に閉店を迎える。掃除をして食器などの跡片付けをして、8:30には着替えて店の鍵を閉めシャッターを下ろし、「お疲れ様でした~」とそれぞれが帰って行く。
たまに店の従業員たちとごはんに行くこともあるが、知坂の会社よりその頻度は圧倒的に少ない。
今日も誰かが「ごはん行く~?」と言い出さず、私は由佳との約束の場所へと無事向かえることになったのだが。
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