指輪

「素敵ですね。教会も雰囲気があってとても綺麗です。匡高さんは?」


「僕はどちらでもいいと思うよ? 沙彩に決めてもらいたいな」


「…」



 ちょちょちょ、そこで決定権を丸投げときましたか。



「では、よく考えてみます」


「うん、分かった」



 しなくてもいいのに、とはとても言えない。

 しかも2人して演技が様になってきてるし。

 どこかの劇団員ですか。



「本当、お似合いのお2人ですね」



 そんなウエディングプランナーのお世辞にもお礼を言いつつ、誘導されるまま結婚指輪が展示されているスペースにまで来てしまった。



「沙彩はどういうデザインが好み?」


「え…と、ですね」



 まさか、ここでこのまま買うつもり?

 高森の行動が読めず、丸がいくつも並べられた指輪の値段を見て目を回す。


 高い!


 偽装ならもっと安くても良い!


 なんて、天下の高森家がそういうところもリサーチしているだろうと、お義父様達のプランに外れるわけにもいかず。



「これ、素敵ですね」



 一番シンプルで、一番値段の安いものに指をさしてみた。

「本当だね」なんて高森は合わせて来るけど



「こっちのはどうだろう」



 そう言いながら、私の手を取って高森が手に取った指輪をはめてきた。

「似合う」と笑って言ったその声が、私の感情を乱し始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る