とあるケーキ屋さんのハロウィンの過ごし方。

第1話

10月31日、ハロウィン当日。



この日の『パティスリー・トモ』では、ハロウィン限定イベントを行っていた。



内容は商品購入の際のレジで、仮装した小学生以下の子供が“トリックオアトリート!”と叫べば、クッキーやミニマドレーヌを詰めてハロウィン仕様にラッピングされたお菓子を貰えるというもの。



仮装は本格的なものでなくても、帽子やお面だけの装着でもオーケーなので、多くの小さな客が親に連れられてやって来ていた。



小さな客だけでなく、イベントでお菓子が必要な大人たちも数日前から焼き菓子を買いに来ていたので、友季ともきたちは数日前から焼き菓子の準備に追われてヘトヘトだった。



だが、老若男女関係なく、にこにことお菓子を抱えて帰っていく背中を見ているのは、作り手としては楽しい。



そんな慌ただしい日を終え、コック帽を脱いだ友季は、まだ制服を着たまま、厨房で次の新作レシピを考えていた。



「シェフー、お先ですー」



「シェフ、お疲れ様でーす」



「おう。お疲れー」



私服に着替えた従業員たちも、次々と帰っていく。



まいはいつも着替えるのが遅く、最後に出てくるので、それまで考えにふけっていようと、友季はのんびりと待ち構えていた。



どうせ、今日はこのまま1人でもう少し残るつもりなので、舞が遅くても気にしない。



そう思っていたが――



「……遅すぎないか?」



いつまで経っても、舞が更衣室から出てこない。

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