最終話 俺は最強の戦士になる

 あの決勝戦のあとのことは、あんまりよく覚えてない。


 俺もブレイズも、ルミナスもみんな倒れ、そこを駆けつけた学園長らに助けてもらったらしい。

 学園長もイーグルアイ先生も、長時間拷問に耐えていた。


 その場にいた全員が痛手を負っていた。


 俺は全身骨折と軽い火傷。

 ブレイズは腰の骨が粉砕。ルミナスは昏睡状態。


 イーグルアイ先生は筋肉を破損。


 学園長は高熱で寝込んでいる。


 ここまでのダメージはない。

 俺も意識がもうろうとしていたし、すぐに医務室で応急処置をしてもらわなければ、あの世に行っていたところだ。


 そんな中、唯一のいいニュースといえば、闇のスキルの持ち主で初代転生者のブラック・シックネスが消失したこと。いいニュースと言っていいのかはわからない。

 あのイーグルアイ先生との衝撃の事実を、忘れたわけじゃない。


 だが、少なくとも、この学園に迫った脅威は当分の間消え去ったことになるだろう。


 相手はひどい心の傷を、俺たちに残して消えたが。



 ***



「ジャックくん!」

「ジャック!」


 俺が医務室で寝ているという噂を聞きつけ、リリーとゲイルが突撃してきた。

 同じ部屋にはブレイズもいる。


 ブレイズは寝ているようだった。


 ちなみにルミナスは、危険なので別の部屋で隔離されている。


「リリーね……怖くて……助けにいかないといけなかったのに……」


「みんなこんな状態に……」


 ふたりとも大泣きだった。


 俺たちを闘技場において逃げたことに、責任を感じている。

 そんな必要なんてない。


「俺は……大丈夫……すぐよくなるさ……」


 声がうまく出なかった。


 声を出そうとすると、強烈に喉が痛む。

 

「やっぱり……しばらくは……休む必要がある……らしい……」


「うん。リリー、ずっとここにいる。ジャックくんが死んだら絶対に嫌だもん」


「おれもずっと面倒見てやるぜ、親友」



 ***



 あれから2週間がたった。


 1週間目にリハビリを始め、なんとか不自由なく体を動かすことができるようになっている。

 俺の体質が特別だったこともあるらしい。体もすっかり綺麗で、ほぼあの戦闘前と同じだった。


 まだ、無茶をするわけにはいかないが。


「オレは結局、おめぇに負けちまったのか」


 ブレイズも、俺に負けないようにリハビリを頑張っている。

 

 ついには、リハビリで勝ってやる、なんてことを言い出した。

 言っていることはよくわからないが、いつものブレイズだ、何も変わってない、と思ってなんだかほっとした。


「ルミナスは……大丈夫なのか」


「あいつは危険なやつだ。牢獄に入れとかねぇと危ないに決まってんだろ」


 ルミナスは3日して目が覚めたらしい。

 相変わらず体はボロボロのままだが、治癒でなんとかよくなったそうだ。


 そして、俺たちが気づかないうちに、この学園を退学。


 王国最大の刑務所に連行された。


「これでよかったのかはわからない。この学園も、今後どうなるのか……」


「ねちねちすんじゃねぇ。オレとしては、今後おめぇをぶっ潰す計画があんだ。学園に潰れてもらっちまったら困る」


「そうか──そうだな」


 俺は苦笑いをした。



 ***



「結局ブレイズは優勝できなかったわけだ。やはり最終的に勝ったのはジャック──さすがは学園屈指の実力者」


 フロストが尊敬を込めて俺に言う。


 俺たちはまた、一緒に朝食を食べていた。

 隣にはゲイルとフロスト、そして正面にはブレイズ。


 そこに、余った右斜め前と左斜め前に、リリーとハローちゃんが座っている。


 俺はすっかり友達に囲まれていた。


「おいフロスト。うるせぇんだいちいち、おめぇはオレに負けたじゃねーか」


「確かに、君は気持ちで、僕よりも勝っていた、ブレイズ。その努力は──」


「あ? しれっと褒めんな! 黙ってろ」


 そう言いながらも、お互いに認め合うようになったフロストとブレイズ。

 正反対のスキル、性格だからこそ、築き上げられる何かがあるのかもしれない。


 リリーとは正式に付き合うことになった。


 だがそれは、ただのラブコメになってしまうので詳しく話すつもりはない。

 

 ハローちゃんとは友達として、いい関係が築けている。

 最近彼女とゲイルの距離がやたらと近いことは、話した方がいいのか?


 ほんの少し体は痛むが、いつもの朝食──学園生活が戻ってきた。



 ***



「今から朝のホームルームを始める。まずは、ストロング、バーニングの復帰を歓迎しよう」


 クラス全体で大きな拍手が巻き起こった。

 

「イーグルアイ先生も、おかえり!」


 ゲイルが大声で言う。

 イーグルアイ先生も、俺たちと同じで今日からの復帰だった。


吾輩わがはいも、タイフーン先生も無事だ。無論、吾輩にはまだ、償わなければならないことが残ってるがな」


 首をかしげている生徒も多い。


 だが、俺は安心した。

 イーグルアイ先生もあの事態を重く受け止め、罪を償おうとしている。


 もちろんただで済まされることじゃない。ただ、俺には先生の誠意が受け取れた。


「そして、遅くなったが、ベストウォーリアートーナメントの優勝者、ジャック・ストロングを祝福しよう」


 ゲイルが飛びかかってきた。

 嬉しすぎて抑えられなかったらしい。ブレイズも炎に包まれながらのスタンディングオベーション。


 だが──。


「俺は優勝者なんかじゃありません。ここにいないルミナス、最後まで一緒に戦ってくれたブレイズ、俺のことを応援してくれた友達みんなが、優勝者だと思います」


「そうか」


 珍しくイーグルアイ先生が微笑んだ。


 俺の答えに満足してくれている。


「吾輩もその精神に倣わなくてはならないようだ。しかし──よいか、あの事件があったことによって学園行事がなくなるわけではない。次は2年生への進級試験。ここで例年クラスの4分の1の生徒が涙を飲む。吾輩のクラスではそんなことがないよう、全員合格の心構えで臨むように」


 また学園生活が再スタートしようとしている。


「ホームルームは以上! 素早くアクロバットの授業に迎え」


 再スタートではあるが、今は心強い仲間たちがいる。

 

 俺のハチャメチャ学園生活は、まだ始まったばかりだ。







《作者あとがき》

 この作品は、僕、エース皇命こうめいが高校2年生の時に書いた作品です。衝撃の告白、ってわけではないんですが……。


 これを書く前に、初めて『僕のヒーローアカデミア』、そして『魔入りました! 入間くん』というアニメを観ました。

 この学園ものは、確かにそれらの作品の影響を強く受けていると思います。


 WEB小説は、とにかくテンポが大切です。わかりやすさや、キャラクターの個性もまた、凄く大事です。

 『実はチートの転生者』は読んでくださる読者様の、楽しんでいる姿を思い浮かべながら、自分も楽しんで書けた作品だったと思っています。


 カクヨムでは他にも様々な異世界ファンタジー作品を公開しているので、ぜひ読みにきてくださいね!



 最後に、『実はチートの転生者』の更新を楽しみにしてくださり、ありがとうございました!

 作者フォローの方もしていただけると嬉しいです。


 ではまた、ファンタジーの世界でお会いしましょう。

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