第12話

「俺はゆづをお嫁さんにするつもりでいるんだけど、ゆづはそうじゃないの?」



酷く険しい表情を見せるナオくん。



そんなつもりで言ったんじゃないのに。



ナオくんの険しい顔をずっとは見ていられなくて、思わず俯く。



「あの……私はナオくんみたいに気が利くわけじゃないし」



「俺も気は利かない方。俺が優しくするのは、ゆづに対してだけ」



「……お料理だって、物凄く上手ってわけでもないし」



「俺はゆづの作ってくれたメシも美味いと思うよ」



「……」



お世辞を言っているようには見えないからこそ、何と答えていいのか分からない。



「そんな理由じゃ、断る理由にはならないから」



断るって、何の話?



そう訊ねようと顔を上げた瞬間、



「俺と結婚しよう、ゆづ」



私のスープマグのすぐ隣に、薄いピンク色の小さな箱が置かれた。

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