第5話
「初日なんだし、辛かったら遠慮なく言ってね」
「うぅ、ありがとうございます」
舞ちゃんの優しさに涙が出そうになる。
苺のヘタ取りをしながら舞ちゃんに頭を下げると、
「俺のことも頼ってくれていいからね!」
私と舞ちゃんの間に、
手こそは握られたりはしないものの、そのあまりに近過ぎる距離感に思わず一歩後ずさりした。
その時、ふと視線を感じて後ろを振り返る。
厨房とお店とを隔てる壁の一部にカフェスペース内の様子を覗ける小さな窓があって、一人でカフェを利用している男性客とその窓越しに目が合った。
――実際には、彼はサングラスをかけていて本当に目が合ったかどうかは定かではないけれど……
「!」
慌てて下を向いて視線を逸らす様子を見る限りでは、きっと目が合ったのだと思う。
「?」
つい最近どこかで会ったことがあるような既視感を覚えた。
と、そこへ、
「あの……シェフ……」
カフェ担当の女性スタッフが、友季さんに恐る恐る声をかけた。
「ちょっと……様子が怪しいお客様がカフェに……」
聞けば、そのお客さんはコーヒーのみの注文でかれこれ一時間以上居座っているらしく――
そして彼女は今しがた、そのお客さんから2杯目のコーヒーのオーダーを受けたのだそう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます