プロローグ〜全てはここから始まった〜

第1話

見渡す限りに広がるうろこ雲の白色と、その隙間から覗く空のあお色のコントラストが美しいと思える、そんな季節のある日の午後。



とあるマンションの一室のリビングのソファーで、ミルクティーとチョコチップクッキーでティータイムを楽しんでいた鈴原すずはら まいは、



「……え?」



テーブルの上のティーカップのすぐ近くに置かれた、キーホルダーも何も付いていない銀色の鍵を不思議そうに見つめた。



困惑したように固まる舞を、



「それ、舞が持ってて」



舞のすぐ隣に座っていた松野まつの 友季ともきが愛おしそうな目で優しく見つめる。



「この部屋の合鍵」



「あいかぎ……えっ? アイカギって、あの合鍵!?」



舞の慌てふためいた台詞に、



「“あの合鍵”がどれを指してるのか知らないけど、そこにあるのは俺の住んでるこの部屋の合鍵ね」



友季は苦笑しながら答えた。



「ここを、舞のもう1つの家だと思ってくれていいから」



「……」



「だから、いつでも俺に会いに来て」



そう言って、友季は舞をそっと抱き寄せる。



まずは舞の額に1つ、左右の頬に1つずつキスを落としてから、



「ん……」



最後に唇を優しく奪う。



ちゅっと小さな音を立てて唇を離すと、



「最近の舞は、ずっと俺のクッキーの味がする」



愛おしそうに苦笑した。

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