プロローグ

第1話

桜吹雪が美しく舞う、とある高校の中庭にて。



「私とゲームの、どっちが大事なのよ!?」



1人の女子生徒が、ベンチに腰掛けている男子生徒の正面に仁王立ちし、彼を睨むように見下ろしていた。



「比べるまでもなく、ゲームかな」



全く気圧けおされることなく即答した彼の左頬を、



「最っ低!!」



――ばちんっ!



女子生徒の右の平手が鋭く打ち、小気味のいい音が中庭中に響き渡った。



「いってー……」



男子生徒はたれた左頬を押さえたが、女子生徒を睨むことはしなかった。



「もう知らない!」



彼の眼中に入ることすら出来なかった彼女は、涙をぽろぽろと零しながら中庭から走り去った。



「……ゲームと比べられてもね」



彼女を追いかけることもしない男子生徒は、反省の色がまるでない。



「ライー! またフラれたんか〜?」



2階の窓から、今日のクラス替え発表で同じクラスになった男友達が、中庭に向かって叫んでいるのが見えた。



「おぉ、今フラれたー!」



ライと呼ばれた2年生の男子生徒――桐生きりゅう 頼斗らいとが、笑いながら大声で返事をした。



そんな頼斗の後ろから、



「あの……!」



先程走り去った女子生徒とはまた別の女子生徒が、息を切らしたまま声をかけてきた。



「何?」



頼斗は、頬を赤く腫らしたまま振り返る。



彼女が何を言おうとしているのか、本当は分かっているが。

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