2章:新しいバイト

第5話

カフェのアルバイトを始めて、数週間が経過した。

最初は初めての飲食店ということもあり、緊張していたが、数週間働いてみたら、少しずつではあるが、この環境にも慣れ始めてきた。

同僚は同世代の人達が多く、男女半々といった形だ。


そんな中で、女の子のお友達ができた。

歳は一緒で。その子に色々お仕事を教えてもらっている。

その子とは他愛のない話からお仕事の話まで、色んな話をしているため、彼氏がいることを話している。

その前に愁が迎えに来るので、バレてしまったわけだが…。

そういった話も含めて、女の子と恋バナをするのも楽しくて。

なんだかんだ今のアルバイト先に馴染めている。


「大平さん、これよろしくお願いします」


こうやって、仕事を任せてもらえるようにもなった。

ちゃんと仕事ができているんだなと思えて、安心する。


「はい。分かりました」


一つずつ丁寧に仕事をこなしていく。

今はまだ他の人達に遅れを取っているかもしれないけど、それでもできることを少しずつ増やしていければいいなと思っている。

全てが新鮮で。楽しみながらお仕事をしていると、あっという間に時間が過ぎていき、アルバイトの終了時間となってしまう。


「大平さん、お疲れ様」


仲良しの女の子のお友達であり、同僚の小林さんが声をかけてくれた。

私も慌てて、「お疲れ様」と返した。


「今日も彼が迎えに来てくれるの?」


そう聞かれ、スマホをチェックすると、愁からメッセージが届いていた。

メッセージには、“今から迎えに行くから待ってて”…だった。


「うん。来てくれるみたい」


「いいな。私もそういう彼氏が欲しいな」


ボソッと小林さんがそう呟いた。

小林さんは可愛いので、今すぐにでも彼氏ができそうだなと思った。


「そう言ってくれてありがとう。小林さんならすぐできそうな気がするけど…」


「そうかな?そう言ってくれてありがとう」


前のアルバイトでも女の子の友達は一応いたが、小林さんほど話しやすい人は初めてで。

もっと小林さんと一緒に居たい。あわよくば、お休みの日に遊びに行きたい。

…なんて思いつつも、なかなか胸の内を話せるわけもなく。今日も大人しく帰るのであった。


「大平さん。それじゃ、また次のバイトで」


小林さんは身支度を整えると、すぐに帰ってしまう。

少し寂しいなと思いつつも、小林さんの帰りを見送る。


「うん。また次のバイトで」


私は一人で愁が迎えに来てくれるのを待った。

数分後、愁が迎えにやって来た。


「お待たせ。帰ろっか」


ちなみに、バイト先には彼氏が迎えに来ることを事前に話している。

わざわざ言わなくてもいいかなと思ったけど、話しておいた方が後々になって説明しなくてもいいかなと思ったからである。


まぁ、普通に考えて、バイト先に迎えに来ている時点で、彼氏だと紹介しているようなものだけど。

それでも、事前に話しておきたかった。愁が何かやらかさないうちに…。

ところ構わず、同僚に対して嫉妬しそうなので、先回りして私が動いておいた方が良いと判断した。


「全然待ってないよ。迎えに来てくれてありがとう」


一人で夜道を帰るより、愁が迎えに来てくれて、一緒に帰る方が安心だけど、どうしてこんなにも胸がモヤモヤした気持ちになるのか分からなかった。この時の私はまだ。


「今日もお疲れ様」


優しく頭を撫でながら、愁はそう言った。

彼氏に労わってもらえて、嬉しかった。


「ありがとう。愁もバイトお疲れ様。働いてきて疲れてる中、迎えに来てくれてありがとうね」


「俺のことは気にするな。俺が勝手に彼女を心配してやっていることだから」


その気持ちが嬉しい。できるようでなかなかできることではないから。


「愁の気持ちが嬉しい。本当にありがとう」


付き合う前のことがあるので、付き合ってからとても大事にされているなと感じている。

愁の愛をたくさん感じることができて、やっと愁の彼女になれたのだと実感することができる。


「当たり前だろう。大事な彼女なんだから」


照れながら、愁はそう言った。

こうやって、素直に自分の気持ちを伝えられるようになり、お互いに成長したなと思う。


「うん。そうだね」

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