第55話

「サヤ、ただラリーするだけじゃ面白くないから、しりとりしながらラリーしていこうか」


「それはいい提案ですね。やってみましょう」



「じゃあ、俺から。しりとり」


「り……リムジン」




沙耶香がそう言った瞬間、しりとりが一瞬で終えたと同時にシャトルも落下した。

二人の間に微妙な空気が流れる。




「あのさ……。しりとりは『ん』がついたら終わりだろ。ラリーと一緒で続いてないし。じゃあ、また俺から行くよ。普通にりんご」


「ゴールド」



「ド……ドーナツ」


「ツ……ツ……ツリーアゲート」



「なんだ、それ? 聞いた事ないな。まぁ、いいや。ト……とうだい」


「イ……イ……インカローズ」



「(さっきから何言ってるかよくわからないな)ズ……ズワイガニ」


「にしきごい」



「い……インコ」


「コ……コ……個人経営者」




沙耶香がそう言うと、颯斗はラケットでシャトルを救いきれずに大爆笑した。




「あははははっ……。しりとりで個人経営者はないだろ。ねぇ、普通のしりとり出来ないの?」


「えっ」



「内容をよく聞いてたら、しりとり自体も金持ちくさいんだけど」


「サヤは普段からこんな感じですけど……」



「そっかそっか、笑ってごめん。じゃあ、シャベル」


「ルーマニア王国」



「そうきたか。じゃあ、熊本城」


「烏骨鶏」



「糸」


「倒産」



「おいおい、不吉だなぁ……。ってか、しりとり終わってるし。サヤのしりとりストーリーを繋げていくと金持ちからの転落人生だな」


「それじゃあ、次は貧乏からの成り上がり人生しりとりをしましょ」



「了解! しりとり」


「颯斗さん! また最初からですか〜」




それから二人はネタが尽きるまでバドミントンを楽しんだ。

沙耶香にとっては勿論、颯斗にとっても楽しいひと時が過ごせた。


その後、斜面の芝生にレジャーシートを敷いて、颯斗が作ったお弁当をぺろりと平げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る