やけに馴れ馴れしい彼

第16話

芸能人オーラに圧倒されて緊張したまま口を開いた。




「はっ……初めまして! 早川結菜と申します。今日からここの家政婦としてお世話に……」

「どうして早川がここにいんの?」


「えっ……」




知り合い口調に驚いて下げかけていた頭を上げた。

だが、サングラスが邪魔して奥の瞳は見えない。




「林さん、もしかして新しい家政婦ってこいつ?」


「同級生を家政婦として雇うのは気が引けましたが、該当者が彼女しかいなくて……」




なっ、なにぃ〜〜?!

話が勝手に進んでるけど、もしかして高杉悟は私の事を知ってるの?

しかも、同級生って何の事かな。

高杉悟に会ったのは今日が初めてなんだけど……。


会話についていけずに混乱していると、彼は私に言った。




「あのさ……。もしかして俺が誰だか気付いてない?」


「……私達、知り合いでしたっけ?」



「知り合いも何も、春から同じクラスだけど」


「えぇっ!! 私のクラスに高杉くんはいません。何かの勘違いじゃないですか?」



「ぷっ……。まだ気づいてねぇし」




正しい事を言ってるのに何故か笑われる始末。

クラスの男子の顔を脳内サーチしても誰1人ヒットしない。

それ以前に金髪の男子なんてクラスにいないし。


彼は少し屈んでミカちゃんを床に下ろすと、ポケットに入っていたマスクを装着した。




「これで誰だかわかる?」


「わかりません」




首を振りつつも、サングラスにマスク姿と、記憶の中の何かがぼんやりと重なってきている。




「毎日マスク姿で登校してるのにわからないか」


「えっ、毎日マスク姿?」




この時点でクラスメイトの中の該当者が1人に絞られたけど、その人は黒髪で黒縁メガネでマスク姿。

しかも、私と同じで他の生徒と一線を引いてる隠キャの阿久津くん。

派手な風貌の高杉悟とは真逆のタイプだから、私の予想はハズレている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る