ミーハーな菜乃花

第2話

「紗南から毎日のように同じ歌を聴き続けているから、私まで歌を覚えちゃうよ」


「良かったら、一緒にハモる?」



「その歌に興味なし」


「じゃー、菜乃花は何に興味があるの?」



「えへへ。私が興味があるのはあっちかな」




そう言った彼女が窓の外へと伸ばした指先が向かったその先は、多数の芸能人が通う芸能科が入っている同校の西校舎。




「芸能科のアイドル君たちかなぁ」


「また、そっち〜?」



「だってぇ。芸能科には私が好きなアイドルグループの《Beans》のハルくんが通ってるから」


「普通科と芸能科は校門すら違うから、まだ一度も校内で会えていないでしょ」



「いつかは会えるかもよ。同じ校舎の空気吸ってるんだもん」


「無理無理。芸能科への入り口がシャットアウトされているし、先生達の見張りが厳しいでしょ」



「いーやっ。何とかして卒業前までには、絶対ハルくんの彼女になる」


「同じ高校なのに出会えるチャンスがないから、菜乃花のその夢は多分叶いそうにないよ…」




ミーハーな菜乃花は、芸能科に通うハルくんの熱狂的な大ファン。



耳にイヤホンが付いてる時は、《Beans》の曲を聴いてる証拠。


CD、DVD、グッズや雑誌の切り抜きなど。

ハルくんに纏わるものは全て集めているほどの、熱狂的なオタクっぷり。



だからこそ、休み時間になる度に教室の窓から顔を覗かせ、ハルくんの行方を探している。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る