前向きな気持ち

第89話

愛里紗は涙をゴシゴシと手の甲で涙を拭い、顔を上げた。




「…谷崎くんに想いを伝えたかった」




掛け時計の秒針が聞こえるほどボソッと小さく呟く愛里紗に対し、ノグは呆れ半分でため息をつく。




「谷崎自身があんたの言動で混乱してるのに、そのタイミングで告白なんて間違ってるよ」


「そう…だね……。ミクが先に告白したから焦っちゃって」




そう……。

ノグの言う通り。

ミクを悪く言いたくないという思いと、遠回しな言動が誤解を生む要因に。




友達に気付かせてもらって知った、間違いだらけの自分。

反省点は山ほどある。

それを克服するのは自分自身。


人の言葉に左右されないように、信念を持たなければならないと思った。




「私…、谷崎くんに謝りたい。早く仲直りしたい」


「うん、そうしな」


「谷崎くんも愛里紗と同じように仲直りしたいと思ってるよ」




ノグの家に来た時は、私が余計な事を言ったから谷崎くんとはもう縁が切れちゃったかな…と思っていたけど……。

ノグとミキに相談したら、気持ちが少し楽になった。




過ぎた時間は戻って来ない。

だけど、間違いを正していく事は出来る。


これから時間をかけながら、二人の間に出来てしまった溝を少しずつ埋めていかないとね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る