第八章

彼のいない教室

第58話

ーー今日は一学期の終業式。


明日からは待ちに待った夏休みがいよいよ始まる。

花火大会や近所の夏祭り、プールに家族旅行。

小学生の私達の夏休みはイベントが盛り沢山だ。




その中でも一番楽しみにしているのは、年に一度きりの自分の誕生日。

今年は友達を家に招待して誕生日パーティを開く予定だ。


家族以外に誕生日のお祝いをしてもらえるなんて、考えるだけでも嬉しくてワクワクしちゃう。




愛里紗は夏休み本番を間近に控え、これから訪れる予定の数々のイベントに期待を寄せていた。





だけど、夏休みを目前に控えた今日。


谷崎くんは学校を休んだ。

私が転校して来てから彼は一日たりとも休んだ事はなかった。




谷崎くん、どうしたのかな。

今日学校に来れば明日からはもう夏休みなのに…。

昨日、神社で一緒に遊んだ時は元気だったのにな。




愛里紗は昨日の元気な様子を知っていただけに、今日の欠席は意外に思えた。






午前日課だったが、翔がいない寂しさが愛里紗を襲う。

休んでる事を理解しつつも、目線は自然と翔の机へ。




彼がいない教室は、まるでぶ厚い雲に阻まれた太陽のよう。






今日は終業式という事もあり、成績表や配布された大量の連絡物がある。

それに加えて、防災頭巾や上履きや道具箱。


夏休みに向けて少しずつ荷物は持って帰っていたけど、終業式の今日はいつも以上に荷物が多い。




担任が欠席した彼の荷物を、誰かが代理で自宅まで届けてくれないかという呼びかけに、「私が行く」と率先して手を上げた。


上履きの件で助けてもらった事もあって、今度は自分が彼の手助けをする番に。

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