最悪の展開

第39話

「実は、卒業を機に引っ越す事になりまして。愛里紗ちゃんには本当に仲良くしていただいたみたいで……。今日までお世話になりました」


「そうでしたか。こちらこそ、娘と仲良くしてくれてありがとうございました」




お互いの母親が最後のお別れの挨拶を始めた。




いま私達が想像していた最悪なパターンが目の前で展開されている。

さっきまで長時間隠れていた事が、まるで無意味だったかのように…。






話を終えた翔の母親が車に戻ろうとした瞬間、愛里紗は翔の母親へと駆け寄り腕にしがみついた。




「ダメ…………。おばさんっ、一生のお願いだから引っ越さないで」




愛里紗は気が狂ったかのように大粒の涙を流しながら懇願する。

すると、愛里紗の母親はすかさず間に入った。




「愛里紗!谷崎さんに迷惑かかるからやめなさい」


「谷崎くんを他の街に連れて行かないで!離れ離れになりたくないの!ずっと一緒にいたいの……」



「ほら、谷崎さんから手を離しなさい」


「おばさん、行っちゃダメ!谷崎くんと一緒にこの街に残って。一生に一度のお願いだから……」




今ならまだ間に合うと思って気持ちを吐露とろした。




私はこの瞬間に全てを賭けている。

翔くんの代わりに私が気持ちを届ければ、おばさんは思いとどまってくれると思っていたから…。

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