幼馴染

第2話

「なあ、萌奈モナ

「うん?」

ハルカちゃんって、付き合ってる人いるの?」


 あと十日もしたら夏休みとなる、いつもの帰り道のことだ。

 突然の質問の意味がわからずに、一緒に帰っていた幼馴染の玲央レオを見上げた。


「あ、俺じゃねえぞ。クラスのやつから、お前に聞いてくれって言われてて。遥ちゃんとお前が仲の良いの知ってたみたいで」


 ああ、そういう意味か。


「ふうん? いないんじゃないかな? 今まで聞いたことないし」


 遥は高校入学時から仲良くなった私の親友だ。

 学校では常に一緒にいるようになり、三ヶ月経つけれど、そんな話は聞いたことがない。


「あんな可愛いのに?」

「うん、可愛いよね。性格もいいんだよ、なのにいないみたい」

「どうして?」

「さあ? 知らないよ」

「遥ちゃんの好きな芸能人のタイプとか、聞いたことある?」

「伊藤尊くんとか、好きって言ってた気がする。優しそうな男の子が好きなのかも」

「へえ」


 そうなんだ、と言ったきり、玲央は空に浮かぶ夕焼けに染まる桃色の雲を見上げ、口角をあげている。

 笑ってる? なに笑い? 思い出し笑い?

 気持ち悪いなあ。

 しばらく、ニヤニヤしていたかと思うと、まるで話の続きのように。 


「そういえば、遥ちゃん以外の女友達も最近できただろ?」

「へ? 私の話?」

「そ、萌奈に友達増えたって話」

「うん、増えたね、増えたよね」


 嬉しくなって同意を求めたら、目を細めた玲央に頭をポンポンと撫でられた。


「すげえ、進歩じゃん」

「そうでしょ? 私も、そう思う」


 歯をこぼして笑い合うのは、ほんの四か月前までの私を、玲央が知っているからだ。



 破られたノート、マジックでイタズラ書きされた教科書、泥だらけの体操服、無くなった上履きたち。

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