幽霊のユウさん

小豆さくや

1

第1話

金木犀の香りがする。


毎年この季節には、中庭の金木犀の香りが病室の中を満たしている。


ベッドの隣には、ユウにもらったアロマが、金木犀の香りを可視化するように匂いを放っていた。


 この香りを吸うのも今年が最後かもしれない。


俺の余命はあと1年と、医者に言われた。


 別に、生きているうちにこの香りを堪能しておこうとかは思わない。


人間は生きている限り、いつ死ぬか分からないから。


寿命を使い切って死ぬかもしれないし、今日や明日不意な事故で死ぬかもしれない。


だったら、今更何を惜しもうか。これが俺の考え方。


俺は残りの命を、平凡に生きるつもりだった。


ユウが来るまでは。

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