第一章

プロローグ

第1話〜第4話

あの日、闇の中であたしは荒れ狂った白い虎を見つけた。





夥しい程の血が広がるその中心で、荒々しいオーラを纏い佇む孤独な虎を────…。













虎にゆっくりと近付いていく。






“お前、目が死んでる”





あたしがそう言うと、虎は顔を上げた。




掴んでいた人の胸ぐらを乱暴に離して、黙ったままじっとあたしを見つめる。






あたしは視線を血まみれになって倒れている男達に向けた。






“ただの反抗期か?それにしちゃあ派手だな”





余りの悲惨な姿に、思わずふっと笑う。









“……なんだてめえ”






虎はまるで獲物を見るかのように冷たく鋭い眼をあたしに向け、低い声を発した。


“意味のないケンカなんかすんじゃねえ。



そんなことやっても、心なんかちっとも満たされねえだろ”




その言葉を聞いて虎は眉間に皺を寄せ、あたしに近寄って来た。



ビリビリと虎から伝わる威圧。



でもあたしは全く気にせず、口角を上げたまま言葉を続けた。





“お前、カッコ悪いよ。狂った猛獣みてえ”












───その瞬間、






虎はあたしの胸ぐらを掴んで、拳を握りあたしの頬へふりおろした。









……が、










あたしはそれをいなして、もう片方の手で鳩尾をおもいっきり殴る。





“……ッ”



虎はその場に崩れた。


崩れて顔を歪ませる虎の前に、ゆっくりとしゃがみ込む。




“───探せ。


自分の守りたいモンを。それを守り抜ける男になれ。



そういう奴が本当に強い奴だ”




そう言ってあたしは、虎の白銀の頭に手を乗せて微笑んだ。























あの頃のあたしは守るものがあった。そのためならどんなにこの手を赤く染めても構わなかった。



怖いものなんてなかった。



それほど大事だった。



やっと見つけた、

あたしの唯一の居場所。



だから昔のあたしみたいな想いしてる奴をみると、ほっとけなかったんだ。



あの頃のあたしは幸せだったよ、



何もない今、あたしは空っぽに戻った。



誓った、あたしは“大切なものを守るため”にしかケンカしないって。




だからもうケンカなんかしない。あの場所には戻れないから。守るものはもうないから。





ねえ、もう逢えないけど今でもあたしのことを仲間だと言ってくれますか?



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