うごきだす感情

ー藍来ー止めてくれ

20話

優大の奴、性格が悪すぎるだろ。俺と真希を引き離しただけでなく、彼女を奪おうとしてる。最悪だ。



ドラムとギターが帰った後、煙草を吸いながら作曲してるし。

咲き誇って群青は、活動してないんじゃなかったのか?


あいつ何を考えてる? 全く分からない。

分かるのは真希に対して本気じゃない事くらいだ。 絶対、守らなければ。


「ん~♪うーん、これはこうかな? よし、いいかも」


鼻歌を歌いながら作曲するのが優大らしい。腹が立つな。

俺はこいつのせいで気分が悪いのに、楽しそうにしてるんだから。


「あっくん、良くない? この部分」


確かに良い感じに聞こえなくもないがな。

でも褒めたら優大だから、すぐ調子に乗るに決まってる。本当の事は言いたくない。


『別に、どうでも良い』


「え、本当に? 僕、真希ちゃんの為に曲を作ってるのに」


『は、何!? 真希の為に作ってるのかよ!』


思わず言葉に出てしまった。


優大がお腹を抱えてる。反応が面白いんだとよ、むかつく。 遠慮なく笑ってやがる。


あの真希が優大の曲で喜ばないはずが無い。

自分を思って作ったなんて知ったら、惚れるだろ。


頬を赤らめて、甘い表情をする彼女を想像してしまうが、慌ててかき消した。


何としても作曲を止めさせないと。

本当に優大のものになってしまう。そんなの絶対に嫌だ!


『おい優大。お前、真希に本気じゃないだろ。なのに曲なんて作るのか? 何でお前が真希の為に? 作る必要なんてない! 』


「あっくん、マジになりすぎだってば」


優大の表情、最低だ。明らかにこちらを見下した顔。

本当、なんなんだよ。 イライラが止まらない。

こいつに悪い顔させたら、右に出るやつなど居ないな。


しかし、まだ馬鹿にしてくる。

いくらなんでも笑いすぎじゃないか?


「もし、僕が真希ちゃんに本気になって、作曲してるんだとしたら? 」



は、有り得ないから。


はっきりと言いきった言葉は優大の表情を変えた。あんなに笑ってたのに、急にしん、と真顔になった。


本気になる? まさか。真希を奪って、良い気になりたいだけだろ。



「本気になるかもよ、僕。最初はあっくんのものだったから興味本位だったけど、彼女を好きになりそう」


嘘だ。好きになるわけが無い。信じたくない。


『何言ってんの?お前なんか、真希の事そんなに知らないくせに。ふざけるのは止めてくれないか』


「そっちこそふざけてるでしょう。あっくんはさ、死んでるんだよ。忘れたの?そんな恋、実るわけないじゃん、無理無理。あと出来ないよね、エッチとかさ。いや、出来ないことは無いかもね。色情霊しきじょうれいにでもなれば? まあ、僕なら真希ちゃんをとろとろに出来るよ」


あ、やばい。本気でむかついてきた。

優大、許さない。

いくらなんでも馬鹿にし過ぎだ。

あと真希をそんなんに出来るとか言うんじゃない。


彼女には絶対触れさせない。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る