第16話

「心配しなくても惑わされたりしませんよ」




あまりにもお祖母ちゃんが騒いでいた所為か、皐月が作業場からひょっこり顔を出した。



いつもは舌打ちしかしない唇がゆるりと上がって猫かぶり婿スマイル。


気の強そうな切れ目を和らげて、視線はお祖母ちゃんの方へ。



しかし、不機嫌。頬がピクピクしている。


本当は頭に乗せた和帽子を投げてブチギレたいところだろう。



“後でわかってんな?お前”と、言いたげな視線を向けられ、思わずドキッとする。




「本当に〜?離婚沙汰になったりしないでよ」


「なりません。言うて俺たちまだ新婚なんで」


「そのわりには新婚らしさがないわねぇ」



「仕事中は出さないようにしてるんです」


「そーお?あなた達。喧嘩してばかりで、あまり仲良くなさそうに見えるけど……」


「そうですか?家じゃわりと仲良くやってますよ」




な?と肩を叩かれ、コクリと首を縦に振る。



嘘ばっかり。


仲良くどころか会話もないに等しいじゃない。



帰ってきてもすぐにキッチンか寝室に閉じこもって、なかなか出てこないくせに。



息でも吐くようにしれっと嘘を吐いて、この男やっぱり信用ならない。

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