第72話

不機嫌な声でたずねられてゴクッと空気を飲み込む。



裏切りの夜を過ごした次の日。


朝起きてスマホを見たら不在着信の履歴が何件か入っていた。



相手は全部、聖也せいや君。


普段は1回掛けてきて終わりなのに何故か連続で。


いったい何事?と連絡を返したら、今日の夜あたしの家に行くって話だった。



毎週お泊りをしているとはいえ、いつも聖也君の家ばかりだし、あたしの家に来るのは珍しい。


仕事終わりに会いたくなったとか、デートの後に寄ったとか、そんな理由で時々来るくらい。



泊まると言えば、そのまま盛り上がって帰らないとか、そんな時だけ。


わざわざ休みの日に泊まりに来ることなんて滅多めったにない。



なのに何故か今日に限ってあたしの家に来たがった。




女のかんと言うけれど、男の勘もあるんじゃないかと思う。



着信履歴の日付は昨日の夜。



出なかった間にしていたことを思えば気まずくて、とにかく微妙な心境になりながら出迎えた今。


部屋に入るなりすこぶる機嫌が悪い。



手に掴んだ物をじっと見ている。

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