第55話

「誰にも言わないから」


「言わないって言われても…」


「実際バラさずに良い子にしてるじゃん」


「まぁ…」


「別に何もしないし。相手してよ」


「えー…」


「ね、楓さん。機嫌取って」




指で手の甲をなぞられて一瞬、息が止まる。


視線を上げたら、あの日と同じ目をした東郷が居た。



散々、生徒らしく接してきておいて、散々先生と呼んでおいて、いきなり名前を呼ぶのは狡い。



全く。あの日と同じ顔をして…。


何もしないなんて絶対嘘でしょう?


裏切る気満々なくせに。

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