『会議を始めます!』

第1話

「つまり学校一の問題児、澤田さわだ慧悟けいごを僕たち生徒会のメンバーに入れろってことですか?」




暗雲立ち込める梅雨、真っ只中の生徒会室。


ジメッとした重苦しい空気が部屋に漂う中。長机の中央の席に腰掛けた美少年が、冷ややかな視線を校長にぶつけた。




彼の名は葉月はづき理央りお



私、松戸まつど菜々ななが所属する【私立、松之木学園まつのきがくえん、生徒会執行部】の会長様である。




顔良し、頭良し、運動神経良し。器用で要領も良く、何をやっても完璧な理央は生徒からも教師からも慕われている。



性格が腹黒いことさえ除けば、人類最強だと言っても過言ではない。



もっとも、皆の前では猫を被っているから、実質、最強みたいものだけど。




そんな無敵の神から絶対零度の眼差しを向けられた校長は「簡単に言えばそういうことになるわね……」と早口で捲し立て、握り締めていた花柄のハンカチで真ん丸な顔を拭った。



暑いと言うよりは冷や汗である。





「入れてどうするんです?」


「そうねぇ……。活動を通じて楽しい学校生活を送れるようにしてあげて欲しい」


「はぁ……」


「そして、荒れ果てた彼を真っ当な人間に更生してあげて欲しいの」




老後の理想でも語るように、校長はうっとりとした表情で“欲しい、欲しい”と私達に要望を告げた。



現実逃避をするような目で明後日の方向を見つめちゃって、凍り付いている私達のことなんて全く見えてない。




頼めば頷くと信じて疑わない様子だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る