第70話

ただの狭い休憩室が緑溢れる広大な土地に建つ豪華な宮殿の綺羅びやかな一室に見える。



金細工だらけの装飾とフリルが満載のファブリック、なんなら姫ベッドまで見えて来そうだ。



いつもはヒロインの立場に居る萌も今城さんの前ではもはやお嬢様に仕えるメイドAにしか見えない。



『お嬢様、あの男は危険です!親しくするのはお止めになって』と懇願してるメイド。



そのメイドみたいに彼女を心配して言うならまだいいが、萌の心の中にあるのは黒い野心だ。



私を消そうとする意地悪心。


複雑な心境。




「別に構いませんわ。そんなの。嫌いたかったら嫌わせて差しあげればいいのよ」


「えー…」


「私は好きで桑子さんと一緒に居るんですから。他人の意見になんかイチイチ左右されません」


「………」


「そもそも一緒に居るだけで嫌いになるなんて。その方の頭が少し可笑しいのよ」




紅茶を口に運びながら今城さんは忌々しそうに小さく溜め息を吐く。



何だかちょっと冷たい。


あまりこういう話は好きじゃないんだろうか。


鬱陶しそうにしてる。

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