第4話

本当にめちゃくちゃカッコイイのに。


何より優しいし。


足腰の弱ったお爺さんだったり、子供連れのお母さんだったり、人が困っていたら直ぐに手を差し伸べて助けてる。



そんな彼の姿を見ると逐一惚れる。


ただ好きなのは私だけだといいんだけど、そうじゃないから困る。


まぁ、それでもやっぱり好きだけど。




「来たね」


「うん…!」



そうこう話しているうちにバスが来た。


目の前に停まってドアが開く。



始発はココだから乗客はまだ誰も乗っていない。




ガラーンとして涼しいバスの中。

 

ソワソワした気分で中に乗り込む。



入って直ぐに座ったみっちゃんと別れ、慣れ親しんだ席を目指す。


当たり前のように空いているその場所。


座っていつもと同じく鏡を見ながら前髪をさっと整える。



次々に人が乗り込み、席が埋まり、バスのドアが音を立てて閉まった。



そこから始まる、彼との時間。


見て過ごすだけの5分間。



今日も変わらず彼は1番前の席に座っている。



思わず身を乗り出してみっちゃんを見ると、彼女は髪を耳に引っ掛けて声も無くニヤリと笑った。



何だかんだ言いつつ、私の姿を見ていて楽しいらしい。


バスで目が合うと大抵意味深な顔で笑われる。



いつもこんな感じ。

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