第20話 謎の言葉それは転換期
「てか…動きすぎ…」
スマホ片手に家を出たシータと青龍ニョロ、やたらと動き回るミリアの位置情報に翻弄されていた。
他の面々も同様である。
「ミリっち全力で動き過ぎだし必死っぽくてウケる~」
「夜苦手、良く見えない飛べない」
アスカ&朱雀トリピッピ、キックボードで出発。
「ホント、バカッて迷惑しかかけないわ‼」
「武器化すらできとらん白虎が心配じゃの~」
ヒスイ&玄武ハンマ、スクーターで移動中。
「誰も来んやんけ…」
そのころ袋小路に追い詰められたミリア&白虎ハッカ、楽しむようにジリジリと距離を詰めてくるヒトガタに絶体絶命状態である。
「ねぇ? 絶対絶命って凄くない?」
「ミリミリ…オマエ何言ってんの?この状況シャキシャキ理解せんかい‼」
「絶対に命を絶たれるってことだよ…怖くない?」
「ミリミリ死なへんやん…100年保証やん」
「…五体満足、健康優良の保証はねぇらしい…アイツが言ってたじゃん」
「せやな…過去にも、そんなんいたんかもな…覚えてへんけど」
「覚えてないんだ?」
「転生って、そういうもんちゃう? 記憶持ったまま転生なんて小説やらアニメだけやで、魂ナメたらアカン」
ゴンッ‼
ミリアの頭の上でコンクリートの壁に穴が空いた。
グチャグチャ喋っている間にヒトガタが目の前に立っていた。
威嚇するようにミリアの横に高々とそびえ立つ壁をぶち抜いてみせたのだ。
「態度悪いやっちゃのぅ…」
「ヒトの事は言えないわ」
態度の悪さについては目くそ鼻くそ、一応、自覚はあるらしい。
「オ…オ…オォォオx…オン…ナ…?」
上体を屈めたヒトガタが、ミリアの顔を覗き込み、たどたどしく喋った。
「オマエ今疑問形だったろがい‼」
ミリア、ヒトガタを怒鳴る。
気が付けば徐々にヒトガタは黒い靄から明らかに形が固定され、今は2m超えのマネキンのように視える、ハッキリではないが、何なら表情も読み取れるほどにヒトである。
「ミリミリ…煽ったらアカン…なんか聞いたことあるで、この手の輩は人に近しいほど強いらしいねんな…」
「…先に言えや‼ モロ人じゃん、黒い人じゃん‼」
「ホホ…ホホ…オ…ンナ…ホホ…」
「女見て興奮気味じゃん‼ こんなんしかいねぇのかよ‼」
ミリアの心が気色の悪さに満たされていたとき
キキー‼
甲高いブレーキ音。
「いたわ…手間かけさせるわ、あの後輩」
スクーターを片足で支えるヒスイ、半防のヘルメットを脱いで、カゴから亀…玄武ハンマを掴む。
「
静かに呟くと玄武ハンマが巨大なハンマーに姿を変える。
「頼れる姉さんやで‼」
援軍到着でミリアの足元に隠れていた白虎ハッカが大喜び。
ツカツカと黒いヒトガタと距離を無造作に詰めていくヒスイ。
グッと力を足に込めて巨大なハンマーを振りかぶる。
「潰れなさい‼」
ブオンッ‼
空気を裂く重い音が深夜の路地の空気が震えた。
「マタ…オ…オンナ…ホホッ…ヒハッ」
ヒスイのハンマーを脇腹に食い込ませながら、なお笑う黒いヒトガタ。
「アカーン‼ 効いてへんで‼」
身体が歪んでいるものの、まるでダメージはない様子の黒いヒトガタ。
「だとしても‼」
ヒスイがハンマーでヒトガタを壁に抑え込む
「貫くっしょ‼」
ヒスイの後方で朱雀トリピッピを構えて矢を放つアスカ。
「…はっ?…貫くのは…アタシだから…」
数本の矢がヒトガタの顔に刺さり、ハンマーで壁に押し付けられ身動きのとれないヒトガタの胸をシータの青龍ニョロが貫き貫通させた。
「おおぅ…ワシなんか感動で泣きそう…」
白虎ハッカ、自分を除いた連携プレイに目頭が熱くなる。
「うん…必要とされてなくてアタシも泣きそう…」
ミリアも別の意味で泣きそう。
「ヒヒ…オ…オンナ…寄ってきたー‼」
割と見た目ダメージ大きそうなヒトガタ、ワラワラ集まる少女に興奮気味。
心なしか言葉も徐々に流暢になっている。
ヒトガタがグッと拳を握り身体に力を込めるとヒスイのハンマーがバンッと弾かれた。
「嘘? なに?」
弾かれたハンマーに身体を振られたヒスイが驚く。
「…なんか…ドイツの…ハードグミみたい…」
「あぁ~ウチはハードダメだわ、柔らか系っしょグミわ、シータはハード系?」
「…ガチめの…ハード系…」
ヒトガタ顔に矢が刺さったまま、気に留めずに胸の槍をズブッと引き抜く。
「ヒヒ…ヒヒヒッ…」
ヌラッと姿勢を整えたヒトガタ、その身体は2mをゆうに超えている。
「いい女見てデカくしてんじゃねぇよ‼」
ヒトガタ背中にいるミリアが怒鳴る。
「…いや…いい女…とか…テレる…グフフ」
「ウチも改めて言われるとテレる、ミリアっち正直で好感爆あげ」
「私を見て、おっしゃってるいることは解りますわ」
三人とも容姿には過分な自信があるらしい。
「オメェ達のことじゃねぇよ‼ アタシのことだよ‼」
PiPiPi…
「あん?」
「アンタ、よく見てごらんなさい、ヒトガタ、アンタだけ見てないのよ…残念だけど」
Drキリコの指摘どおり、ヒトガタ、ミリアに背を向けている。
「ウケる」
思わずアスカが笑い出す。
「何の用だよ‼」
「真打登場の巻‼」
「あん?」
「アンタ、ここで決めるのが主人公なのよ」
「
「アンタのは
「アムド? なにドーナツチェーン的な? アイアムドーナツみたいな?」
「ブッ‼ いちいちウケる~」
Drキリコが言う『
物語の折り返しにきて、ようやく主人公として活躍するのか?
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