第19話
どうしてこんなにも私に執着するのだろう。
他の人間はあっさりと塵箱に捨てて来た癖に、どうして私はそれ等に該当しなかったのだろう。
いっその事、もっと早い段階で塵にされた方が幸福だった。その方がきっと、こんなにも苦しくなかった。
「綴、語。」
彼等に睨まれる中、重い口を開いた。
二人共「なぁに?」と、弾んだ声で聴き返してくる。
あの日、あの時、あの瞬間、偶然彼等に気に入られたばっかりに、私の人生はぐしゃぐしゃに狂わされた。
十五年前の春「夜永にするの」と彼等が発した後、三時間かけて描いた似顔絵を渡した時の何十倍も喜んだ父親に、生まれて初めて酷く褒められた。
「今日から夜永は、綴君と語君のお遊戯相手になるんだよ。二人の要望には絶対に忠実に従うんだよ、良いね?」
“それから夜永は、今日からこの屋敷で彼等と住めるんだよ”
何が何だか分からなかった私にそう告げた父親は、満面の笑みで私から手を放したのだった。
「さようなら、夜永。」
手を振って背中を向ける父親は、絵本で見る父親像とは偉く違っていたけれど、それでも私の中では世界でたった一人の父だった。
だからこそ、また父親と会えると信じて疑わなかったし、家にいる母親の作る美味しいご飯をまた食べられるに決まっていると思っていた。
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