第108話

誰もいない廊下で、興奮したようにそう吐いたひー君は。





「ちゃんと僕に従順に教育される日鞠は良い子だね。」





恍惚とした貌を見せて。



愛でるように、私の頬を撫で。





「好きだよ、日鞠。」




私が欲しかった言葉をくれた。



嬉しい。



ひー君が、私を好いてくれる。


こんな私を、必要としてくれている。



それだけで、心が満たされる思いだ。




「何も知らずに純真で、僕に染まる日鞠が愛おしいよ。」





ざらついた熱い感触が、頬に走る。


ひー君が、私の輪郭に舌を這わせたからだ。





「ふふふっ。僕の日鞠。可愛い日鞠。絶対に誰にも渡さないよ。」


「ひー君、今日ご機嫌だね。」


「うん、日鞠が僕の所に来てくれたからね。」




彼の口ぶりは、まるで私が彼を求めていたのを知っているようだった。



ううん、実際ひー君は本当に私の事を何でも知っている。理解してくれている。





「ひー君…。」


「今日はもうお家に帰ろうか。」




ほらね、口に出さなくともひー君は私の気持ちを汲み取ってくれるの。



心地が良い。


安心してしまう。




小さく頷いた私に、ひー君は顔を綻ばせた。

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