第87話
これまでの人生─…私の隣には颯斗がいるのが当たり前で、異性と触れ合う機会なんてあるはずもなく…こんなふうに少し触れられるだけでも”気持ち悪い”と感じてしまう。
八雲先生に悪気があったのか、ただ冗談のつもりでからかっただけなのかは分からないが…私の中で”生理的に無理な人”という立ち位置に彼がついた瞬間だった。
その後、先程のやり取りなどまるで無かったかのように普通に仕事をして業務的に接してくるところも気味が悪くて、もう一刻も早く帰りたくて仕方がなかった。
「菜々さん、顔色悪いですけど…大丈夫ですか」
ようやく退勤の時間になり、誰よりも早く更衣室から出ようとした私に…一つ年下の
「……だ、大丈夫。お昼ご飯少なかったからお腹減っちゃっただけだよ、帰っていっぱいご飯食べるね」
「そうですか…?無理しちゃダメですよ」
心配顔の後輩に見送られながら、タイムカードを打って足早に医院を後にした。そのままスーパーに寄って買い物をしようと思っていたが……
「……颯斗っ、会いたい」
一秒でも早く颯斗の顔を見て、ただ安心したかった。この何とも言えない気持ちの悪い状態から私を解放してくれるのは…この世でたった1人、颯斗しか存在しない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます