第60話

どんどん気持ちが落ち込んでいく私とは違い、もんじゃ焼きを食べ慣れていない様子の鷺坂さんは一人楽しそうに明太子入りのもんじゃを突っついて笑っている。




いつものように、颯斗が広げて焼いてくれていたもんじゃ焼きが鷺坂さんの手によってグシャグシャにされていく様を見ながら…




まるで私たちの関係を壊されているような気持ちになってきて、情けなくも泣きそうになってきた。




──…帰りたいっ、




そう思った時、頭の上にポンッと颯斗の大きな手のひらが落っこちてきた。




「…鷺坂に意地悪でも言われた?」



隣に腰を下ろし、私のお皿にお好み焼きを乗せてくれた颯斗は、その後すぐに鷺坂さんの手によってグシャグシャにされたもんじゃ焼きの修正に入る。




「え…?別に意地悪とかしてないよ!俺の将来のビジョンについて菜々ちゃんが質問してくれたから、正直に答えてっ」



「菜々がお前の将来について聞きたいはずないだろ。」



「なんだよ、やけに自信満々だな」



「当たり前。菜々が興味あるのは俺だけだから。─…そーだよな、菜々?」




グシャグシャになったもんじゃ焼きを元に戻してくれた颯斗は、その視線を私に寄越してきては…口角を上げ得意げに笑った。




……颯斗のこういうところ、本当にムカつく。

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