3



 川コンビと私1人の2組に分かれて、どんなデザインにするかなどを考える時間。



 私は校舎内を装飾する為の飾り作成。どこにどんな飾り付けをするか粗方考えるのだ。



「………」



 しかし、やっぱり寂しい。


 楽しそうに意見を言い合いながら盛り上がっている川コンビを見ていると、1人での活動が虚しく思えてくる。河原先生はノートに何か記入をしているし。


 1人では、面白くない。




 そんなこと考えながら紙に案を書き出していると、突然ノック音が鳴り響いた。



  コンコンッ



  ガラッ



「失礼します、柚木です」



 開いた扉から現れた柚木先生。


 その姿に、河原先生は少しだけ眉間に皺を寄せた。



「……柚木先生、何か用か」

「僕は平澤さんを探してここに来ました。……平澤さん、何も知らずにずっと部室で待っていました。文化祭実行委員になったのなら、一言欲しかったです」

「……あっ、すみません。あの、帰りのショートホームルームで急遽決まったもので」

「俺のせいだ。2年だけ決め忘れていた。平澤は悪くないから責めるな」

「別に責めていませんよ」



 柚木先生は部屋に入り、扉を閉めた。そして私の隣の席に座ってこちらを向く。



「平澤さんがここにいたら、僕1人がボランティア部にいてもどうにもなりません。……河原先生。僕も一緒に参加しても良いですか?」



 そう笑顔で河原先生に声を掛ける柚木先生。


 河原先生はムスッとした表情で、ひたすら柚木先生を睨んでいた。



「何も言わないってことは、宜しいということですか?」

「…………好きにしろ」



 不機嫌そうな河原先生と、嬉しそうな柚木先生。



 昼休みに柚木先生と一緒に過ごした時は、元気が無くて暗くて辛そうだったけれど。


 今の柚木先生からはそんな様子が見られない。何か、心情の変化でもあったのだろうか。




 隣に座っている柚木先生は私の方を向き、微笑みながら話しかけてきた。



「平澤さん。昼休みの後、購買におにぎりが残っていたので買って食べました。そのお陰か、元気が出ましたよ」


 ニコッと微笑んで報告してくれる柚木先生に、思わずこちらも笑顔が浮かぶ。


 おにぎりを食べたと聞いて一安心した。やっぱり食べないと元気は出ないんだ。



 嬉しくてつい手を叩いてしまった私は、微笑んだまま言葉を発する。



「そうでしたか。駄目ですやっぱり。こんにゃくゼリーだけでは元気が出ません」

「はい、平澤さんの言う通りでした。明日からちゃんと食べますね」

「絶対ですよ。その言葉、忘れませんから」



 ボランティア部でいつもしているような会話を交わす私と柚木先生。



 その様子を、川コンビが不思議そうに眺めていた。



「平澤さんと柚木先生、仲良いっすね」

「会話がカップルそのものです」

「えぇ!?」



 指摘され、思わず驚きの声が出る。

 一方冷静そうな柚木先生は、微笑みながら川コンビを見た。



「僕、ボランティア部の顧問なんですけどね、部員が平澤さんしかいないのです。いつも2人なのでこんな感じが日常です。人数が少ないからこそ、明るく和気あいあいと、です」

「へぇ、ボランティア部1人なんすか……。確かに、3年にはいないっすね」

「1年もいません。そういうことでしたか」


 納得した川コンビは再び紙に視線を向け、パンフレットについての話し合いを再開した。



「……」



 チラッと、横目で河原先生を見てみる。


 先生はノートに視線を落としたまま、今もまだ何かを記入していた。




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