第60話

いつの間にか浅野先生は電話を切っていた。


「深野さん、来週の土曜日空けておいてね?」



「えっ!?ちょっと待ってください、休みかどうか……、」


アタシが焦ってそう言うと彼女は院内電話の横に立てかけてある勤務表を指さす。



「この日連休じゃない、絶対予定入れちゃダメよ!」



「そんな急すぎますよ……、」


「何言ってるの、相手は前から深野さんを気に入ってたんだから。善は急げ、よ。」


彼女はうれしそうに自分の携帯に予定を打ち込む。



「……そんな、いきなり二人は抵抗が、」


「誰も始めから二人になんかしないわよ、アタシも行くからね。」


もう断れないと観念する。でもそう言われて少しホッとする自分がいた。

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