第70話

夕方ほとんど人気のないベンチに俺と波久はいた。


「凪、俺今の時間はクリームソーダは飲みたくないんだよ。」


「文句言わない、飲んで落ち着いて。」


「俺はいつでも冷静だ。」


「冷静じゃないからここで頭冷やそう、お互い。」


そう言うと波久はクリームソーダのプルタブを開ける。


「なんで山本さんに手を挙げようとしたの。俺のため?」


「……なわけねーよ。ただ気に入らなかったんだアイツが。」


「波久は手を挙げるような人じゃないよ。」


「……さぁな。もうお前帰れよ、菜々も待ってるんじゃねーの。」


波久は核心をついた言葉を俺には発しない。


「菜々に謝っといてよ。もう院内では関わらねーから。」


俺は頷いた。

でも俺も院内で菜々にもう話し掛けることは出来ない。

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