第56話

「天音、ごめん。変な奴のせいで気分悪いよな?」


「天真ってやっぱりクズだったんだね」


冷めた表情で天真を見るあたし。

美香もゴミを見るような目をしている。


「あんたは女の敵ね、天音は明良くらいの純粋な奴のほうがいいんじゃない?」


あ、そうだった!と美香は続ける。


「天音、剣道の大会のこと、聞いた?行く?応援」


「うん、予定なかったしせっかく誘ってくれたから見に行くつもり。美香もだよね?」


「ええ。あいつの大学、賢い御曹司もたくさんいるし、良い出会いあるかもしれないしね〜♡良い男いたら紹介してもらおっ」


「美香」


やっぱり美香は恋に生きる女だ。


その時、ギュッと絡まる指。

見ると天真がまたしても恋人繋ぎをしてきた。


「天音も行くのか?」


そうして指先から力を徐々に強めてきた。

捨て犬のような表情をした天真が尋ねてくる。


(う、可愛い。あたしこの表情に弱いのよね)


あたしが答える前に、


「行くに決まってんでしょ?天音にも新しい出会いは必要なんだから。あんたが少しは厚生したのかもしれないけど、少なくとも明良はあんたより良い男よ」


美香が言い放つ。

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