第6話 未知なる決断
事故から数日が経ち、直樹は施設での出来事が頭から離れなかった。怪我をした子供は大事に至らなかったものの、直樹の中には強い感情が渦巻いていた。
「もっと自分にできることがあったのではないか?」
そんな思いに駆られた直樹は、放課後になると図書館にこもり、医療や介護に関する本を読み漁るようになった。かつて外科医だった経験を活かし、今の高校生としてどうやって人々に貢献できるのかを真剣に模索していた。
ある日、拓海がそんな直樹を見つけて声をかけた。
「お前、最近なんか真剣だな。何か悩んでるのか?」
直樹は本を閉じ、深く息を吐いた。
「実はさ、この前の事故の時、もっと早く適切な対処ができたんじゃないかって思うんだ。俺は、過去の自分に甘んじているだけじゃダメだと思う。もっと学ばないと、もっと強くならないと。」
拓海は真剣な直樹の表情を見て、軽く頷いた。
「そっか、直樹らしいな。でも無理はするなよ。俺たちはまだ高校生だし、何も全部一人で背負う必要はない。」
「そうかもしれないけど…」直樹は微妙な表情で言葉を続けた。「高校生だからこそ、今のうちにできることを探しておかないとって思うんだ。未来のために。」
拓海はその言葉に少し驚き、そして笑った。
「お前、本当にすげぇよな。俺はそこまで考えてないけど…直樹が何かやるなら、俺も手伝うよ。」
その日、直樹は改めて自分の覚悟を再確認した。拓海の言葉も背中を押してくれたが、心の中にはもっと大きな決断が迫っていた。それは「医者としての道に戻るべきか?」という問いだ。
数日後、直樹は陽菜にもその悩みを打ち明けた。
「陽菜、俺…また医療の道に進むべきかもしれないって思ってるんだ。」
突然の告白に驚いた陽菜は、一瞬戸惑った表情を見せたが、すぐに真剣な眼差しで直樹を見つめた。
「直樹がそう思うなら、私は応援するよ。でも、どうして急にそんなことを考えるようになったの?」
直樹は少し考え込んだ後、静かに答えた。
「前世での経験が俺の中でまだ生きているからなんだ。医者として人を救いたいって気持ちは消えていないし、このまま普通の高校生として過ごすだけじゃ、何かが足りない気がしてならないんだ。」
陽菜は優しく微笑みながら、直樹の手を取った。
「直樹が何を選んでも、私はあなたのそばにいるよ。一緒に新しい道を見つけよう?」
その言葉に直樹は少し救われた気がした。彼の中には依然として葛藤が渦巻いていたが、少しずつ未来に向けた方向が見え始めているのを感じた。
その夜、直樹はベッドに横たわりながら、今後の自分の進むべき道について考え続けた。次の日、彼は大きな決断をするために、再びボランティア活動に参加することを決意した。医者としてだけでなく、一人の人間として、どんな形であれ誰かの役に立ちたいという思いが強くなっていったのだ。
そして、直樹は知らなかった。彼がこの道を選ぶことで、今後の人生にどれほど大きな変化が訪れるのかを…。
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