サプライズ
「サプラーイズ!」
目の前にドンと大きな箱が置かれる。
「……なに、これ?」
「だからサプライズだって!」
そう言う彼の顔は屈託のない笑みで満ち満ちている。
「誕生日は5月だよ?」
「知ってる!」
知ってるのか。ではサプライズとは一体……?
記憶をたどるが、彼から何かものを貰えるようなことをした覚えはない。
特別なことはなかったように思う。
「……もしかして謝罪?」
「なんの?」
違うらしい。
何か私に対して謝らなければいけないようなことをしでかしたのかと思ったが、そうではないと。
そうすると後は何だろうか。
本当に何にも思い当たらない。
「難しく考えなくていいよ。日頃の感謝を込めてのサプライズだから!」
そういって箱を開けるように促してくる。
どうしよう。感謝されるようなことをした覚えなんてない。
というより、そもそも彼は——。
「いいからさ、早く開けてよ!」
「わかった、わかったから」
なんだかやけに急かされる。
丁寧にラッピングされた大きな箱。小型犬くらいは入りそうだ。
さすがに生き物ではないだろうと箱を開けると、緩衝材に包まれた拳大の小さな箱が出てきた。過剰梱包すぎるでしょ。
というかこの小さい箱って……。
「……ねぇ、これ」
「開けてみて!」
手にとってみる。
上下にカパリと開けると、案の定指輪が出てきた。
「僕と結婚してください!」
彼は片膝をついて私を見上げてくる。
その目はキラキラと輝いているように見えた。
「ひとつ聞いてもいい?」
「もちろん!」
彼はなんでも答えるよと息巻いている。
ひどく興奮しているのか、顔は上気し耳まで紅い。
それがひどく恐ろしく思えた。
「あなた、私の——」
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