第17話 カラオケで東都が尊死させてくる
待ち望んだ放課後。
俺は隣の席にいる東都へ話しかけた。
「東都。今日はこの前言ってくれていた俺の服でも見立ててくれるか?」
東都と放課後デートができる嬉しさと高揚感を抑えながら、なんとか隣の席の彼女へ言えた。
「あ、それもいいねー。でも、服はまた今度でも良い?」
それって言うのはまたデートしてくれるって解釈で良いのだろう。そう思うと普通に嬉しいな。
「ああ。いつでも良いよ。どっか行きたいところあんの?」
俺としては東都とならどこでも良い。
「せっかくテスト終わったからさ、パァッとカラオケでも行かない?」
「おお。カラオケかー」
「男子は苦手な人も多いって聞いたことあるけど……千田くんは大丈夫?」
「全然おっけー。カラオケ行こうぜー。うぇーい」
「いえーい」
ふたりして変なテンションで絡み合い、あははと笑い合った。
「俺、小学校の時の校歌とかめっちゃ得意だわー。多分九〇点超えるぜ」
「多分、カラオケに校歌はないと思うよ?」
♢
学校帰りに制服のまま駅前のカラオケにやって来た。
制服のまま男女がカラオケなんてエモの塊過ぎて、エモーションがエモーショナルでエターナルなんて訳わからんことを考えたりしてみせる。
「私達の部屋は……21番だね」
東都がスマホを見つつ、受付をスルーしながら言った。
最近のカラオケはアプリで予約ができるみたい。東都がアプリで予約してくれて、そのまま入室。
「ちょっと狭いね」
「ふたりだから良いんじゃない?」
「それもそうだね」
ちょっと狭めの薄暗い部屋。
ソファーが一つとセンターテーブル。それと大きなモニターのどこにでもありそうなカラオケの部屋。
隣り合って座る。
ピタッと膝と膝が密着した。
「えへへ。いつも隣の席だけど、今日は凄く近いね。緊張する」
多分、俺の方が緊張してんぞ。
そんなことも言えぬまま、東都に言った。
「お先にどうぞ」
「私からで良いの?」
「どうぞ、どうぞ」
「じゃ、遠慮なく」
東都がサクッと曲を入れてマイクを持つ。
「この曲、最近SNSで流行ってるんだー」
彼女が言ったあとにイントロが流れてくる。
「あ、聞いたことある。やたらショート動画で流れてるやつだ」
「そうそう。この曲好きなんだよね」
イントロ中にそんなやり取りをすると、画面に歌詞が浮かび上がり、東都が歌い出した。
「……ぉぉー」
ついつい小さく声が出てしまった。
うまい。
うますぎる。
東都の可愛いらしい歌声で繰り広げられるラブソングは脳がとろけそうになる。
もうすぐサビに入ろうとした時、東都がこちらを向いてくる。
『きみが好き』
ドキンと心臓が跳ねた。
『きみしか見えない。一緒に過ごした日々。モノクロの日常が色付く。なにげない会話もわたしの宝物。大好きだよ』
ちょっと待ってくれよ。やたら甘い歌詞をこっち向いて歌ってるから、俺に言ってるみたいで尊死寸前なんだが!
『愛してるよ♡』
この後もラブソングが続いて、無事に尊死しました。
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