第35話 スイの誕生日


――――地球で言えば、2/14。情人節だ。

情人節とは、地球で言うバレンタインデーではるが、この日は私の誕生日でもある。


皇后の誕生日と言うことで、宴会が開かれたり、新作スイーツを試食させてもらったりと楽しい日々でもあるのだが。――――そんな折。


「飛……?何してるのかしら」

物陰に、飛の姿を見付けたのだ。そして何か……しゃべってる……?


「スイ、誕生日おめでとう『ありがとう、飛!』」

あぁーっ!!これは、ひとりお人形さん……いや、ぬいごっこ!

私ぬい相手にデモンストレーション!?


「今日はスイに取って置きの贈り物があるのだ」

あら、何かしら。これ……聞いちゃっても構わないかしらね?何かサプライズをしようとしてくれているのでは。


「『何かしら~』」

飛の裏声かわいいわね。


「えと……その……目を閉じて『こう?』……」

そして飛は、私ぬいに顔を近付けた。うん……?


「ちゅっ」


「へぁっ!?」

思わず声を出してしまった。飛ったら、私ぬいに口付け……ってか、サプライズってそれ!?そんなロマンチックなこと計画してたの!?


しかし間抜けな声を出してしまったお陰で、飛に気付かれてしまった。


「見……みみみ、見……っ」

「ごめん……見てしまったわ」

今さら嘘などつけまい。あのかわいい飛の裏声ぬいデモンストレーションの前では。なんか、嘘で汚してはならない何かを感じるのよね。


「……そ……そんな……さ、さぷらいず……」

うぅ……しゅーんとしたところがまるでわんこ!しょんぼりわんこみたいだし!!


「その……目を閉じてみよっかな~~」

あからさまに目を閉じてみるアピールに移行する私。だが、素通りされたらどうしようかしら。それはそれでショックである。


「……」

でも、何となく分かるのよね。飛がとたとたと私に近付いて来たことが。まだ……かしらね……?少し薄目で覗いてみれば、目と鼻の先に飛の顔が……あぁぁっ!


そして……。


ちゅ……っ。


唇に落ちてきた、柔らかい感触。

ゆっくりと瞼を開けばら飛の顔が離れていく。


「さぷらいずだ」

「……う、嬉しいわ……!」

いや、知っちゃったのだけど……でも。飛がそう告げるところがやっぱりかわいいのだ。

それに、ぬいには頬だったのに……本番は口とか。


「スイ、私ぬいを……」


「え……えぇ」

もちろん私もポシェットに入れて連れてきている。

飛ぬいを受け取った飛は、私ぬいに……。


ちゅ……っ。


――――と、ぬい同士キスをさせていた。ちょ……っ、何そのかわいいやりとり!しかも……ぬい同士は唇……。


「スイぬいの唇は……私ぬいのものなのだ」

私ぬいを私に見立ててデモンストレーションしても、そこはしっかりと守る……と言うことか。


「スイぬいもきっと、喜んでるわ」

「うむ……!」

満足げな飛。

そして誕生日プレゼントを無事にもらったので……夜は私から、情人節の巧克力を贈ろうかしら。


――――サプライズでね。

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