第18話 皇后と実りの秋


さぁ、妖魔帝国にも実りの秋が来た!秋と言えば食欲もさることながら、忘れちゃならないのが……ぬいの、秋コスよ!!


そして今私の目の前では……!


「うふふ。マオピーぬいの秋の装い、とっても素敵。私ぬいの秋の装いとお揃いなのよ?」

胡艶が自作のふわもこマオピーぬい秋帽子とマントバージョンを抱き締めながらふんわりと微笑めば……。

胡艶作、胡艶の狐耳おしっぽぬいを嬉しそうに抱いているマオピー。

胡艶ぬいは肌寒くなってくるこの時期にぴったり!ファー付き旗袍を身に纏っている。そしてお帽子はマオピーぬいとお揃いである!


2人も2人のぬいもまとめてかっわい~い!

私は私でこの秋コスを飛雲に……衣装を持ち上げたとき、その傍らに置いてあったぬいパーツを見る。私ぬい用ではないのだけど……うーん。作ってみたものの、その下の飛雲の素顔は……分からないから。だから未だにそれは、お面だけなのだが。


少し考え込んでいれば、蔡宰相と飛雲がやって来て、慌ててパーツを隠し、衣装だけを手に取った。


「スイ……それは」

「ぬい用の秋コスよ。着せてあげてね」

そう告げれば、相変わらず可愛らしく衣装を受け取る飛雲。一方で……。


「何かあったの?蔡宰相まで来るなんて」


「えぇ、その件なのですが」

蔡宰相が口を開く。


「この秋に合わせて、月亮の料理の知識と、妖魔帝国の食材を組み合わせたグルメを売り出す予定なのです」


「わぁ……素敵ね!私も食べてみたいわ!」

「えぇ、食べてください」


「……はい?」


「スイ皇后の食リポ公務の出番です!」

「えぇ――――っ!?」

ほんとにやるの、その公務!いや、美味しいものを食べられるのは嬉しいけども……!?


「明後日、帝都の広間でお披露目をしますので、準備しておいてくださいね」

「そ……それはもちろん……!」

急ではあるものの、それも月亮と帝国の友好の架け橋になるのなら、私も月亮から嫁いだ役目を果たさねば!


「……ところで……スイ」

うん……?飛雲が私の衣の袂をちょんちょんと引っ張ってくる。

何かしら、そのかわいい仕草。オトメ度上がってないかしら……?


「その……ぬいのお着替えだが……お着替えをさせると……私はスイの裸を……み、見ることに……っ」

いや、正確には私のぬいよ!?

だけどそれは、世のオタクたちが必ず通る道と言ってもいい。ぬいを着せ替えさせると……推しぬいの……素肌をまじまじと見ることになることを……っ!その葛藤に今、飛雲はいるのだ……!

それにその……。


「だ……ダメ、かしら。私たち、夫婦なのよ……?」

「夫婦……うむ……そう、なのだが……やはりスイの裸を見るのはその……き……緊張して……っ」

いつも夜、ベッドの中で抱き締めてくるのに、そこはうぶなの……?


「大丈夫よ。何なら今私が手伝うわ」

自分ぬいだもの。何てことない。


「お待ちを……!そう言うのは我々が退出してからにしてくださいます!?」

何故か蔡宰相に怒られてしまった。マオピーもさすがにそれは見られないと退出。最後の頼みの綱の胡艶は『後は若いおふたりで……っ、きゃ……っ』と言って退出していった。


いやその、私が着替えるんじゃなくて、ぬいのお着替えですけど!?


「す……スイ、私も目を瞑っていたほうが……いいだろうか……っ」

そわそわしつつもやはり気になるのか、私ぬいをちらちらと見る飛雲。


「そんなに緊張しなくていいのよ」

もちろん私はぬいのお着替えはこなれているので。

ぱっぱっぱっと着替えさせていく。


「ほら、できた」

「す……スイの裸を……裸をまじまじと……っ」

恥ずかしそうにしながらも、まじまじと見たらしいのは、それも雄の本能か何かゆえだろうか。


「とにかく……ほら。かわいくお着替えできたでしょ?」

秋コスを身に付けた私ぬいを、そっと受け取った飛雲は……優しく胸元に抱き締めた。本当に大切にしてくれて、作成者冥利に尽きるわね。


「スイ……大好きだ」

ひぁっ!?いきなりそんな……っ、急に!?そんなまっすぐに言われたら、顔が赤くなっちゃう……いやいや、そもそもその言葉は私ぬいに言ったのよね?そうよ……秋コスがかわいかったから……きっとそうよね……!?


「スイ」

しかし次の瞬間、飛雲の手が私の頬に伸びてくる。


「私もスイに、衣を贈ろうか」

「あー、えと、秋服ってこと……?」


「うむ……!」

私がぬいに秋コスを贈ったことで、飛雲も閃いたらしい。


「楽しみにしていてくれ……!」

「それなら……楽しみにしているわ」

何だかぬいがキューピットになってくれたみたいで微笑ましいわね。


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