第9話
「ァ、ァアアアアアアアアア!!」
「ッ……なんて、覇気……!」
大地が爆ぜる。大気が震える。
リラトゥとマリーが拳を振るうたびに、周囲がグズグズのゼラチンのように崩れていく。
この世界に、英雄以上に硬い物など存在しない。彼らが己の武を比べ合うという事は、そっくりそのまま周囲を完膚なきまでに破壊する事に繋がる。
英雄が相争うには余りにも狭い応接室を抜け、二人の戦場は
「【
虚空が湧きたち、リラトゥの使役する
異能、【
北部に生息し、光の屈折率を操作する事で幻覚を見せる狐。大気の中に潜み、呼吸を通じて生物に寄生するさなぎ。リラトゥのお気に入りでもあり、凶悪な能力を持つ二匹がそれぞれ空中のマリーへ襲い掛かり――――。
「―――おぉ、りゃぁあ!!」
拳一発で、粉々に砕かれる。
「…………意味が、分からない……!!」
理不尽が服を着て歩いているような、自分を凌駕するほどの膂力。肌に傷一つすらつかない、馬鹿げた防御力。
「(体捌きは素人。技術もてんでダメ。フェイントには全部引っ掛かるし、攻撃にビビって眼を瞑る時点でお話にならない。なのに……)」
なのに、勝てない。
戦ったことも無い、乙女の柔肌。小枝のように細い手足。鍛えられていない筋肉。そんな彼女に、先ほどから自分の
「【
地中を掘り進み、希少鉱物のみを選んで食する蟲。その眼を通して、マリーを冷静に見つめる。
結果は変わらない。貧弱な手足に不釣り合いな、異常な出力。それでいて、過剰な出力に肉体が傷ついていると言ったことも無い。条理に合わない、無茶苦茶な現実。
「…………異能」
現実を破壊する、英雄が持つ異様な能力。今の彼女を説明するには、それしか考えられない。
「実は貴女も、英雄だった……訳、無いよね」
「そりゃそうよ。英雄なら、最初にお腹刺されちゃったりしないでしょ」
人肉を好むリラトゥの審美眼は一流の物だ。彼女は徹頭徹尾、ただの少女でしかない。
では、他には何が考えられる?
王国が別の英雄を抱えていた? 商国からの武器貸与? それとも法国か? 在野に、自分の知らない英雄が眠っていた?
一国を回すリラトゥの頭脳が、思索の果てに一つの可能性を思い浮かべる。
「――――クライヒハルトの、異能は」
そのあまりの有り得なさに、つい口を
クライヒハルトの異能は、単純な《自己強化》系だと認識されている。
神が宿っているとしか思えない、黄金の肉体。それがクライヒハルトの異能であり、正面戦闘においては無敵。それが実際にクライヒハルトと戦ったリラトゥや、彼を血眼になって捜査した他国の結論だった。と言うか、そうでなければあの膂力は説明がつかない。
だが、そうではないとすれば。
元々、確証を得ていた訳ではない。そして今のこの光景は、異能の関与無しにはあり得ない。
「勘が良いのね。そう、それが正解よ」
やはり。クライヒハルトの能力は、単なる自己強化では無かった。推測するに、他者へ関与する
「クライヒハルトの異能はね。『自分の力を、主人と思った相手に捧げる』事。自己強化系の真逆……かつて発現した者は誰もいないであろう、前代未聞の自己弱体化系の異能よ」
「…………は?」
一瞬、思考が停止する。
ありえない……というか、聞いたことが無い。
意味の分からない、異様な能力。そんな物が異能と呼べるのか。それはむしろ呪いではないのか。様々な思考が、リラトゥの脳裏を巡る。
「……なに、それ?」
「聞いた通りよ。筋力とか、防御力とか、俊敏性とか……彼のありとあらゆる力を、彼の
……意味不明だ。
何の役に立つのだ、そんな能力が。
目の前の
常軌を逸する英雄の力を振るってもなお、彼女の手足には傷一つ付いていない。反動で発生するダメージからも、クライヒハルトの異能が保護しているのだろう。ただの少女を、帝国最強の英雄である己と渡り合えるまでに強化する。それも、相手には何の代償も無しに。一体どれ程の出力があればそんな事が可能なのか、リラトゥには想像もつかなかった。
そして。
そんな異能を発現するに至った、クライヒハルトの心情も。
「【
「……ムカつく……やっぱり、貴女は嫌い……!」
リラトゥの異能の根幹は、"捕食"だ。
彼女に喰われた時点で、それは彼女の物になる。
「【
そのまま呼び出すも、混ぜ合わせて強化するも彼女の自由自在。
他者強化系の能力を持つ魔物を複数混ぜ合わせて出来た、骨の巨斧。それを呼び出し、身体能力を底上げして距離を詰める。
「グッ……!」
「【
背後から吼える、鯨の頭をした漆黒の巨人。粘液を垂れ流しながら蟲を産み続ける女王蟻。子供がグチャグチャに描いた空想のような、積み木で出来た玩具のような、不出来な造形。歪な怪物と共に、眼の前の英雄モドキへ斧を振るう。
今は兎に角、眼の前の彼女が許せない。
マリー・アストリアが、憎くて仕方が無い。
王国との和平も、面倒な交渉も。全て、彼女に出会う為だった。
彼女を殺すために、今までの策略の全てはあった。
「え……ええーい!!」
子供のようなヘロヘロのパンチと共に、暴風が吹き荒れる。
産みだした魔物もリラトゥも、諸共に吹き飛ばされる。
まだだ。まだ、自分は全てをぶつけられていない。
「【
新たに、複数の魔物を産み出す。
空を泳ぐ金魚。無理矢理に竜の頭を載せた人間の死体。魔臓を摘出した、自爆する事しか出来ない妖精。
「やぁあーーーっ!」
それらすべてが、ただの拳の一振りで倒される。
「――――なんで」
呟く。
リラトゥの中で、食べる事は取り込む事だ。
相手を取り込み、自らの物にする。そこには当然、対象への深い理解が伴う。異能を行使したリラトゥは、食べた者の経歴や
「なんで」
だから。
あの戦争で手に入れた、クライヒハルトの血。それを手に入れた彼女は、クライヒハルトの想いを理解してしまっているのだ。一部分ゆえにほんの僅かしか読み取れなかったが、それでも―――。
「……なんであなたは、そんなにも愛されてるの!」
マリー・アストリアが。
クライヒハルトに痛いほど愛されている事だけは、何とか読み取れたのだ。
「……貴方、泣いてるの……?」
「ずるいよ……クライヒハルトの血は、あなたへの想いで一杯だった! マリー様にお仕えするのが楽しくて仕方が無いって! マリー様の事が大好きだって! そう言ってた!」
想いの丈を明かすように、そう叫ぶ。
何の訓練も積んでいない小娘を、英雄へ押し上げるほどの愛。それを眼前に見せつけられる事は、リラトゥにとって何よりの苦痛だった。
「ずるい、ずるい、ずるい……!! 私の方が、クライヒハルトを好きなのに!」
「ッ……! 【
斧を振るう。怪物を吐き出す。マリーの振るう腰の入っていない拳に押されながらも、懸命に食らいつく。
「私も、クライヒハルトに愛されたい! 家族が欲しいの!」
リラトゥにとって、家族は自分を食べようとしてくる者だった。
英雄として産まれた、特別な自分。それを取り込むことで、自分も英雄になろうとした両親。英雄の肌に歯が入るわけも無いのに、必死に赤子である自分の腕にむしゃぶりつく両親を見て、リラトゥは人の愛し方を学習した。
食べることは、愛する事だ。食べる事はよい事だ。英雄である自分は、教祖の子である自分は、人々を愛さなければならない。だから、食べる。嫌われている魔物も、罪人も、リラトゥはみな慈しんで喰らう。それが、正しい愛し方なのだ。リラトゥはそう学習していた。
だけど。
初めて、クライヒハルトに出会ってから。
この人が自分の家族だったらどれだけ幸せだろうと考えてしまった時から、リラトゥは少しおかしくなった。人を喰うだけの怪物が、何かを生み出したくなった。あるいはそれは、怪物にとって初めて人間性が芽生えた時だったのかもしれない。
そしてその人間性ゆえに、リラトゥはマリー・アストリアの殺害を決心した。クライヒハルトの血には、マリーへの愛情が確かにあった。リラトゥにとってはいまだ未知である性欲のギトギトした味の奥に、彼女を大切に思う、暖かい愛情の味が確かにあったのだ。
だからこそ、何としてもマリー・アストリアを殺さなければならない。怪物である自分にとって、手に入れるということは奪うことだから。
「【
自らへ魔物の因子を組み込む、裏技じみた異能の使い道。
リラトゥの異能は、クライヒハルトと出会った時から成長し続けている。これも、やった事は無いが出来ると確信していた。
より動きを捉えるために、昆虫の複眼を。より強い筋力のために、巨人の筋線維を。獲物へ喰らいつくための牙、音を逃がさない猫の耳。痛みと共に、自らの身体が造り変わっていくのを感じる。
怖くはない。恋とは"変わる事を恐れないもの"だと、何処かで聞いたことがあるから。
「……随分、可愛らしい顔になったじゃない? ヴェスパー
「ありがとう……貴方も、もっと素敵にしてあげる」
強化された肉体で、つぎはぎの斧を振るう。
いまだ、マリーの肉体には傷一つ付かない。クライヒハルトの異能が、彼女を護っているのだ。腹が立つ、が、もはや構わない。彼女を喰い、その在り方を学習し、クライヒハルトに愛される自分になる。今の自分は、ただその為だけの命でいい。
「――――――!」
フルスイングした斧が、マリーの身体を捉える。刃は食い込まなかったが、そのまま力一杯振り抜いて彼女を吹き飛ばす。
彼女の肉体が、真にクライヒハルトと同質の物であるなら。
窒息死や毒物といった
「【
自らの指を食い千切る。口内に広がる鉄の味を感じながら、胎内で異能を練り上げる。
「
頭がハイになっていくのを感じる。未だかつてやった事の無い異能の使い方に、全身が弾け飛びそうになる。
「嬉しいな……わたし、こんなにクライヒハルトの事が好きなんだ」
喰べた魔物をそのまま産み直すのではない。混ぜるのでも、自分に組み込むのでもない。
誰も見た事のない、新しい命を創り出す異能。リラトゥにはそれが、クライヒハルトを好きになった証のように思えた。
「―――――――ッ!」
跳ね起きたマリーが、リラトゥに渦巻く莫大なエネルギーを察して身構える。
疑いようもない。リラトゥは今、英雄として一段上の存在へ上がった。英雄への恋が、怪物を変えたのだ。
「……本当、要らない事ばっかりするわねアイツは……!!」
そう言って、マリーもまた剣を構える。
戦闘の素人である彼女は圧されてばかりであったが、リラトゥに言いたい事だけは沢山あった。
こちらの事情も知らず、好き勝手に言いやがって。家族愛なんざ、私だって感じた事なんて無いわ。母親は弱った身体で私を産んだせいで死んで、父はずっと王としての顔しか見せてくれなくて。"ずるい"なんて言われる筋合いなんざ一つも無いぞ。あのマゾが私を随分気に入ってくれてるから、いつも何とかギリギリ綱渡り出来ているだけだ。それをお前、ヴェスパーだか何だかとの婚約話をでっち上げやがって。百回ビンタしても足りないくらいの恨みがあるんだぞこっちは。
その他諸々、まだまだ言い尽くせない。
足りない。わたしにはまだ、彼女と話したい事が沢山ある。
「だから! 一回ボコって、しっかり大人しくしてもらうわよ―――!」
マリーの持つ剣へ、光が渦を巻いて集まっていく。
クライヒハルトの持つ、無尽蔵のエネルギー。それを一箇所に集めて放出する、彼女なりの必殺技。
そして。
「【
「【
リラトゥが産み出した異形の巨人と、マリーが放った黄金の光がぶつかり。
「星が堕ちてきた」と、周囲の住民は後に語ったという。
どうも。
クライヒハルトエネルギーは人体にジッサイ無害、筋肉痛もありません。
マリー・アストリアである。
「ふう……疲れた。いや疲れてはないはずなんだけど、気疲れが凄い」
あのクソマゾが一度【
なんだろうな……夢の中で
「……う……」
「あ、起きた」
横で倒れ伏していたリラトゥが、僅かに身じろぎする。
「私、は……」
「一応言っとくと、こっちの完勝よ。貴方の巨人を完膚なきまでに吹き飛ばして、それで終わり」
「ぁ……、そっか……」
そう言って、リラトゥは大人しくへたり込む。一回負けて随分しおらしくなったわね、コイツ。一応【
「……殺さないの?」
「殺さないわよ! 何なのよその蛮族的な発想……1か0しか脳内に無いの?」
「でも、クライヒハルトが危ない……」
「はい?」
どういう事? と思って、すぐリラトゥが勘違いしている事に気が付く。
「私に力を捧げてるから、クライヒハルトが弱体化してるんじゃないかってこと?」
「……そう。私に勝てるくらいの力を貴女にあげちゃったら。クライヒハルトが、ヴェスパーに負けちゃうよ……」
だからここで殺しといた方が
「あのね、逆よ逆」
「…………?」
「【
「え……じゃあ、つまり……」
「クライヒハルトは、今が一番強いのよ。戦争中貴方と戦ってる時もワイバーンを退治するときも、クライヒハルトはずっと私に力を捧げ続けて、弱体化した状態で戦ってたの」
ヴェスパーナントカなんて、今頃チリも残って無いわよ。そう言って乾いた笑いを浮かべる。何にも鍛えていない (美容に全振りしているのだ) 私を英雄に押し上げるほどの、異常極まりない出力。それを常に外部へ放出しながら、かすり傷程度でリラトゥに完勝してみせる。つくづく、あのマゾが王国最強の英雄だという事を思い知らされる。
「……なにそれ。意味わからない……」
「ねー。いやまあ、それを言い始めたら貴女の異能も私視点だと大概なんだけど……」
補給も休養も要らない、不眠不休で動く兵隊とか君主にとって理想過ぎるわ。
「クライヒハルトがこっちに来ないのは、私が来ないように言ったからよ。今頃ヴェスパーを粉々に解体して、森で果物でも漁ってるんじゃないかしら」
「そんな、寝起きの熊みたいな……」
「ふふっ、確かに。良いわね、寝起きの熊」
リラトゥが意外なワードセンスを発揮したため、少し笑ってしまう。
確かに、クライヒハルトは熊っぽい所がなくもない。無駄に背が高いし。
「…………………」
「ちょっと、何よ。人の顔をジッと見つめて」
「……私を、殺さないの?」
「だから、言ったでしょ。クライヒハルトは負けやしないって―――」
「―――そうじゃなくて」
………………。
リラトゥが、静かにこちらを見据える。
「私は、貴女を殺そうとしたのに。なのに、殺さなくていいの?」
「…………」
……まあ。イザベラあたりなら、ここで積極的に殺せコールでもしていただろうな。彼女はそういう、苛烈な性格だから。
「殺さないわよ」
「なんで?」
「……まず一つ。今回、私が一分の隙も無く完勝したから。殺そうとした云々以前に、貴女に私は殺せないわよ」
不意打ちで腹貫かれたのはまあ、ご愛嬌という物だ。仕方が無いだろう、私は戦いに関して完全に素人なんだ。だがその傷も、今や完全に塞がっている。【
「二つ。貴女にもう、私を殺す気は無いでしょ。無理って分かったんだから」
「……うん。成長した異能でも、貴女に勝てなかったし。何より、クライヒハルトに私の狙いがバレちゃったから。もう、今度は今みたいな一対一もさせてくれないと思う」
「それはそうね……」
あのマゾの心配性は常軌を逸するからな。今後リラトゥに会うとなれば、地を這ってでもついてくるだろう。天井に張り付くあのマゾの姿が目に浮かぶ。
「……………」
「どうしたの? 突然キョロキョロして……」
「いえ……ちょっと怖くなって……」
以前私の寝室に張り付いていたクライヒハルトを思い出し、つい辺りを見回してしまった。"暗殺者警護! 暗殺者警護です!!"と叫びながら奴は連れていかれたが、私はあの後しばらく背後に立たれる事がトラウマになった。
「……とにかく。最後、三つ目」
「……うん」
「私が、そんなに怒ってないから。これが一番の理由よ」
結局。私のリラトゥに対する恨みと言えば、ちょっとビンタさせて欲しい程度の物だ。そんな程度で彼女を殺すなんて、全く持って天秤が釣り合っていない。
「……なんで? 私、貴女に色々……」
「まあ……確かに、貴女のせいで婚約させられたし、めちゃくちゃ焦らされたし、正体が魔物だったせいで婚約破棄になりそうだし、おなか貫かれて評判的にも物理的にも傷物にされたけど……」
振り返ってみると、ビンタ百発していいくらいの事はされてるな私。
「でも、まあ……良いわよ。子供に、そこまで怒る気になれないわ」
私の持つ、異能にも満たないほんのささやかな特殊能力。
『長く話すと、その人が欲しがっている物が分かる』。
彼女は、徹頭徹尾クライヒハルトの事が好きだっただけだから。
誤った倫理と歪んだ教育で産まれた怪物が、やっと少し人になろうとしていたから。
その最中に少し迷惑を掛けられたくらい、笑って許してやろうと思ったのだ。
私の損害と言えば、既に底値を割っている私の王国内における風評が更に下限を突破した程度だしな。結局私も私の配下も無傷だし、クライヒハルトはこの後のご褒美を考えてご機嫌だし。
「…………そう。そっか……」
「そうよ。ありがたく思いなさい」
あと。
クライヒハルトが、私の事を大切に思っていると。
そう教えてくれたからというのが、ほんの少しだけ。
「……あー、あっつい。耳が熱いわ」
「……? どうしたの?」
「いや、別に……ちょっと、思った以上に阿呆な自分に気が付いて……」
まあ、別に。何にも思っちゃいないけど。
ここで貸しを作って、リラトゥに……リラトゥ帝国初代皇帝であるリラトゥに、色々やって欲しい事が山ほどあるから。それもあるわね、うん。彼女の肩書で、いったい私の『劇団』がどれ程豊かになるか。大人ってそういう物だから。汚いものだから。
「……まずはそうね、今回完膚なきまでにブッ壊れた屋敷の賠償についてなんだけど……」
私の歳費からは払えないわよ。
そう頭の中でパチパチと計算しながら、草一つ生えない荒野となった地べたに座り込んで。私とリラトゥはやっと、『
どうも。
世界最強のマゾ奴隷、クライヒハルトです。
「チョップ! 死ね死ね、さっさと死ね~~~~」
「ガ……ァ、ア……」
軽く手刀を振るって、チョチョイのジョイと俺っぽい魔物の四肢を斬り落とす。
「デビルチョップは地獄耳、デビルチョップは機動力~」
まだ再生するっぽかったんで、もう一回四肢をもいで首から上も切り離しておく。よし、これで動きも止まったな。
しかし、よくこれで勝てると思ったな、リラトゥ。アホなんじゃないか。こちとら曲がりなりにも王国最強の英雄やぞ。俺の300分の1以下である僅かな血と、そこらの魔物の寄せ集めで勝てる訳ないだろ。あと、コイツの顔ってほんとに俺に似てる? だとしたらちょっと異世界で整形考えちゃうんだけど。美容系の異能とか探しちゃうぞ。
ふう……。
マリー殿下への助太刀は禁じられているので、早速ながらやる事が無くなってしまった。
こういう時、マゾごとの性格が出るよな。こういう時ってのは、ご主人様に放置プレイを命じられた時ってことな。大人しく命令に従うのか、更なるマゾポイントを求めて動くのか……。
あ、一応言っておくとどっちが良いかって話じゃないぞ。マゾに正解も不正解も無い、皆がそれぞれに素晴らしいんだ。無暗に敵を作ろうとするのはやめよう。
そして俺は、徹頭徹尾ご主人様の命令に従うタイプだ。何だろうな、ご主人様の為にある、一つの道具でありたいというか……命令にひたすら従うのが好きなんだよな。
「まあ……あと、万が一にも負けないだろうし……」
そう呟いて、俺は周囲に生えてる果物でも探しに行くのだった。今宵のクライヒハルトは飢えております。極めて単純な意味で。
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