第5話

「はい。その条件と言うのが、貴女の婚約者がカティア皇女に対して不誠実な態度を取っていたと露呈することです。その条件はご令息自ら首を絞めてくださいましたので条件は満たされたことになります。あとは貴女さえ受け入れて下されば婚約させて頂けると。もちろん、私はカティア皇女と政略結婚がしたいわけではありません。貴女と結婚することが出来るのなら恋愛結婚が良いと思っています」

「で、殿下。いつの間にお父様とそのようなお話をされていたのですか?私は何もお聞きしていませんでしたけれど……?」


 そんな話になっていたのなら私に一言でもお話ししてくだされば良かったのに。当事者は私ですよね?


「お気を悪くされたのでしたら申し訳ありません。この条件が満たされる可能性は低いと思っていたものですから、貴女に余計な気を遣わせたくないと判断した結果です」


 お父様……いざとなったら抗議できるように準備していたこと、皇太子殿下にお話ししていなかったのですか?ちょっと悪意を感じますね……?

 いつもレイモンド様ではなく、アルバート皇太子殿下なら安心して私を任せられるとおっしゃられていましたのに。私のことを溺愛してくださっているのは分かっていますけど……


「そうだったのですね」

「ええ。……カティア皇女殿下、改めて言わせてください。ずっとお慕いしておりました。私は貴女を手に入れたくて仕方がない」

「………………」


 これまでの話の内容から想像はついていました。私がなんと言われるのか。いくらなんでもここまで言われて勘付かない人はいないと思います。


 私、先ほど皇太子殿下がおっしゃられていたように今回を合わせて十三回、求婚をされているのですよ。数年前に王国に留学に来られて、その時に私を好きになってくださったのだとお聞きしました。今までは婚約者がいましたからお断りしていましたけど、せめて文通だけでもと言われて文通をしていました。

 本当に素敵な方なのですよ。文武両道なのはもちろん、容姿端麗でもありますし何より優しいです。婚約者があんな感じでしたから余計に優しく感じましたね。


 これだけ完璧な方にずっと想われていたら好きにならずにはいられないですよ………


「何度も何度も貴女に婚約を申し込みました。以前よりは親しくなれたと思っていますが、今回受け入れて頂けなかったらもう求婚しません。これ以上は確実に迷惑でしょうから。ですからお願いです、すぐに返事をして頂かないくても大丈夫ですから……前向きに検討しては頂けないですか?」

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