第3話

「ご覧になったら分かるかと存じますが、レモーネ公爵令息とルー男爵令嬢の浮気を証言致します。証拠はこちらにありますので、よろしければご確認ください」


 いつかのためにと用意していた浮気の証拠をまとめた書類を侍女から受け取り、こちらに来た国王陛下の近衛騎士に手渡す。それを渡された国王陛下は書類にまとめられた証拠を読み進めるにつれ、険しい表情になっていく。読み終わった書類を王妃殿下にも見せ、それを見た王妃殿下は絶望にも似た表情を浮かべた。


 私たちの婚約が両家の関係改善のためだけでないと知っているのはごく一部の者のみです。


「いかがでしょうか?」

「……レモーネ公爵令息、ローデント公爵令嬢の婚約破棄を認める。カティア嬢がそこの男爵令嬢をいじめていたという事実がないと言うことは私が保証し、レモーネ公爵令息が婚約者に対して失礼では済まされない態度を取っていたということについても彼女の話していた通りだと断言しよう」

「な、なぜです……!?」

「令息に発言を許可した覚えはない。だが今回は特別に答えてやろう。王家直属の諜報員より報告が入っていた。だがそれが誤っている可能性もあったために何も言わなかったが、こうして証拠まで提出されてはどうにもならないだろう」


 王家直属の諜報員と言うのは、国中のあらゆる場所から常に国を見張っていて、誰がどんな目に合おうと国王の言葉以外で動くことはありません。例えば、殺人事件が起きて何もしていないのに犯人にされたとします。真犯人を知っていたとしても、国王陛下が真偽を確かめない限り本当のことを言うことはありません。


 つまり、その諜報員の報告であれば冤罪が冤罪だと分かるのです。


「それは……」

「自分の婚約が本当に両家の関係修復のためだけだと思っていたのか?他に考えたことはなかったのか?よく考えれば察することは出来ただろうに」

「国王陛下、もう良いでしょう。わたくしたちをこの国に留めてきたかったのなら別の行動を起こすべきでした。旦那様と息子たち、そしてカティアを連れてわたくしたちは母国に帰ります」


 私の横にお母様たちが並び立ちます。この婚約、実は東の隣国である大帝国と深い繋がりを持つために仕組まれたものです。主な理由はこちらですが、表向きは両家の関係修復、ですね。気付いている方もいらっしゃったでしょう。なにせお母様は大帝国の元皇女、顔が知れた存在ですから。


 今はお父様が大帝国で大公の地位を持っていらっしゃるから一応私も皇女ですね。

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