ヤンデレ姉妹達のいる日常幕間2、三日月の告白
ヤンデレ姉妹達のいる日常、幕間2。三日月の告白一話
お盆休み明けの週末。お昼過ぎに家を出て、電車を数回乗り継いで。ようやく辿り着いた場所は、人で溢れかえっていた。
周りをみれば、サイリウムを持ったり、グッズを買っていたり、推し同士好きの集団が集まって会話などをしているのを目撃する。
夜鴉3rdLIVE、ドーム前にはそう書かれた垂れ幕のような物が掲げられていた。
相手と待ち合わせ場所を決めていなくて、探すのに少し時間がかかってしまったが、待ち合わせ相手を見つける。だが、どうやら男達に絡まれているっぽい
「ねぇねぇ、電話番号だけでいいからさぁ。教えてよ〜」
「あの、悪いですけど、僕……待ち合わせしてる人を探さなくちゃいけないので」
「だったら、俺達も協力して探してあげるよ」
「三日月」
男達に絡まれて、迷惑そうな顔をしていた三日月だが、断りずらそうにしていたので。見つけた俺から声をかける。
「あっ……零夜お兄さん」
「ちっ、待ち合わせしてる奴って男だったのかよ」
嬉しそうに駆け寄ってきた三日月の姿をみて、三日月に絡んでいた男達は舌打ちをして離れていく。
「すみません、まさかこんなに、人がいるなんて思ってなくて」
「いやぁ、俺もライブなんて初めてきたけど。ここまで人が集まるんだな」
正直ライブを舐めていた。今で数千人近くの人がライブ会場付近で集まっているのを見て、驚きを隠せない。
「それにしても、零夜お兄さん。よく夜鴉のライブチケットなんて手に入れる事ができましたよね。今回の夜鴉のライブチケット。抽選確率が凄く高いって、ネットでも言われてたんですよ」
「え……そんなに高いの?」
俺がこのチケットを手に入れる事ができたのは、アイドルグループ夜鴉に所属している陽菜ちゃんから貰ったから。だけど思い出してみれば、俺の同級生にも夜鴉好きがいて、ライブチケットの抽選を逃したと叫んでいた。
確か夜鴉好きの同級生はCDを50枚程買って、先行抽選に応募していたので。そう考えると三日月の言う通り、このライブチケットの抽選はとても高いのではないか。
「はい。噂ではネットの裏取引で、チケット一枚、数百万するとか」
「三日月、それ以上はやめておこうか」
「むぐぐ」
あまり、よくない事を言おうとしている三日月の口を塞ぐ。
今回、なんで三日月を、この夜鴉3rdLIVEに連れてきたかと言うと。お盆休みの間に三日月の部屋に訪れる機会があって、そこで夜鴉のポスターを見かけて三日月に聞くと夜鴉のファンなのだ。
実は陽菜ちゃんからチケットを受け取った時には気付いていなかったが。貰ったチケットはペアチケットというもので。調べてみたら、二人で行く事が可能だった。
お盆休みでは五叶の事で、三日月に悪いことをしてしまったので。お礼も兼ねて俺から誘って。三日月はライブに行ける事を凄く喜んでいたが、不思議な顔もしていた。
「最初、零夜お兄さんが、夜鴉を知っていたとは僕も驚きました」
「え?あぁ。まぁね、そう言う三日月は話を聞いた限り結構好きみたいだな」
「はい、今でこそアイドルグループ夜鴉は人気になり。公式フォロワーもつい最近、二百万人を突破しましたけど。最初の頃はCDの売れ行きもあまりよくなかったんです……けど、テレビに取り上げられてから。人気は急上昇」
「わかった、わかったから。一旦落ち着け三日月」
「あ……ごめんなさい、つい熱く語っちゃって」
「いや、三日月が夜鴉の事が好きなのは伝わってきたから、全然恥ずかしがらなくてもいいんじゃないか。それで三日月は誰か推しているメンバーはいるのか」
「推しのメンバー……だったら菜乃花燕ちゃんですかね。僕と同じ中学二年生なんですけど、メンバー達の中でも人気があってですね」
夜鴉のメンバー達が写っているポスターを指さした三日月。どうやら三日月の推しのメンバーは燕さんであった。燕さんの事を熱く語っている三日月の話を聞きながら、ある事を思い出していた。
「つい最近、何か事件に巻き込まれたようなんですけど。それでもライブに参加する……零夜お兄さん?」
「あぁ、ごめん三日月。ちょっと考え事してた」
ポスターの燕さんを見ていたら。あの日、燕さんに告白されたのを思い出してしまった。燕さんとデートをするのは八月三十一日の夏休み最終日。その日が着々と迫っているのを考えていた。
「零夜お兄さん、もうすぐ開場時間ですね」
三日月と共に入場待機列に並び、開場時間になって続々と人の列が押し寄せる。
「うっ……」
「三日月、気分が悪いなら休むか?」
人の列で酔ってしまったのか、気分が少し悪そうな三日月に声をかけたが、三日月は首を横に振る。
「いえ、ここまで来たのに。こんな所で、零夜お兄さんに迷惑をかける訳には行きませんから」
入場待機列は進んで行き、俺はスタッフにチケットを見せて。俺と三日月もライブ会場に入る事ができたのだが、入場待機列とは違う、スタッフ達が行き交ってる。通路に案内される。
「えっと、零夜お兄さん。本当にこっちで合ってるんですか?」
三日月の言う通り、俺もこんな所を通っていいものなのだろうかと思っていたら。見知った人物が前の通路から駆け寄ってきて、声をかけてくる。
「零夜さんですよね!?」
「あ……陽菜ちゃん」
隣を歩いていた三日月は、驚きすぎて声も上げていない。まぁ三日月が驚くのも無理はない、駆け寄って声をかけてきたのは。今日の主役でもある。アイドルグループ夜鴉のメンバーで、リーダーの春夏陽菜ちゃんなのだから。
「あの、零夜さん。今日は来てくれて、ありがとうござ……い……ます」
陽菜ちゃんは隣にいる三日月を見ると、陽菜ちゃんの表情は少し暗くなった。
「えっと、零夜さん……隣の人は?」
「この子は三日月。今日は陽菜ちゃんから貰ったチケットで、一緒にライブを見にきたんだ」
隣にいた三日月を陽菜ちゃんに紹介する。
「そう……なん……ですね。女の子と一緒に見にきたんですか……」
「陽菜ちゃん?」
「あ……いえなんでもないです。よかったらライブ最後まで、楽しんでいってください」
逃げ出すようにその場から走り出していく陽菜ちゃんを見て、隣にいた三日月は呟く。
「零夜お兄さん、今の人って……夜鴉のリーダー春夏陽菜さんでしたよね!?」
驚いて興奮しながら俺に尋ねてくる三日月。
「え?あぁ、そうだね」
「もしかして、零夜お兄さん。春夏陽菜さんとお知り合いなんですか。今もチケットを貰ったとか、言ってましたけど」
「うん、まぁ、知り合いというか。ちょっと色々あってね」
三日月と話しながら、通路の先を進むと。出入り口が見えてきて、ライブ会場の最前列に辿り着いて。その場にいたライブスタッフの人に誘導される。
「零夜お兄さん、ここって、関係者席ですよね?」
ライブ会場の最前列では座席が並べられていて、スタッフの誘導で座席に座った俺と三日月。
「三日月、関係者席ってなんだ?」
ライブなんて一度も行ったことがなかったので、知っていそうな三日月に尋ねる。
「関係者席はライブに携わってる人が、関係者用に招待してくれる席の事です。普通なら、親族、知り合い、知人に配られたりするんですけど。」
どうやら陽菜ちゃんから貰ったライブのチケットは、関係者用に用意されていたチケットで。そうやすやす簡単に手に入る物ではなかったようだ。
三日月はどうやって俺がそんなチケットを手に入れたか、気になっているみたいだが、そこは尋ねてこないでいてくれた。
それから少し時間が経って、夜鴉3rdLIVEが始まる。
ライブが始まって二時間程経って、ライブ会場はファン達の熱狂で、もの凄く盛り上がって終了した。
「零夜お兄さんライブ凄かったですね」
「生のライブなんて初めて見たけど、これは凄いな」
夜鴉のライブが終わり、三日月と共にライブの感想を話していたら、近くにいたスタッフの人に声をかけられる。
「あの……九重零夜さんですか?」
「え?はい、そうですけど」
「菜乃花燕さんから、あなたを呼んでくるように頼まれたのですが」
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