第12話 仲立ち所と視線
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〈ラトさん〉夫婦と〈仲立ち
〈仲立ち所〉とは、簡単に言えば日雇いの仕事を紹介してくれる場所らしい。
紹介の内容は、まず町の中で求められる力仕事とか汚れ仕事がある、これが大部分を
ただし、この仕事ではあまりお金は貰えないみたいだ、危険じゃないからだ。
他には隊商の護衛があるが、お金はそこそこ貰えるが、かなりの信用が必要らしい、たぶんコネ的なものが必要なんだろう、親戚とか友人とか人物を保証する人がいないと、とてもじゃないが怖くて雇えないのだろうな。
護衛が強盗へ、早変わりでは目も当てられない。
まあ、〈妻〉を襲いそうになったヤツがいるくらいだから、ヤクザな
そして最後は、〈洞窟の迷宮〉へ潜って魔物を狩る仕事だ、これが一番儲かるが、一番死んでしまうって事だ。
ここの迷宮は二級だから〈化け鼠〉が二匹同時に出てくるんだ、それは本当に危険だと思う、二匹の動きを同時に見る必要があるため、難易度は一匹の時と比べて二倍では
〈等級〉を上げられない人ばかりなんだから、ちょっとした油断や体調不良で、サクッと命を落としてしまうぞ。
〈仲立ち所〉は
〈汚くみすぼらしい目が虚ろな人達〉の方が圧倒的に多い。
〈野獣みたいな人種〉は、
異様なオーラを放っているのは、日常的に命のやり取りをしているせいだな、自分達は他の人間とは違うと言う自負心と言うか、ものすごい
「おっ、家族総出で登録とは、村から逃げてきたんだな。 若いのはともかく、年寄りじゃ直ぐに死ぬぞ。 本当に直ぐに死んでしまうんだ、迷宮じゃなくて日雇いにした方が良いんじゃないのか。 俺は今忠告したからな」
おぉー、一発でバレたよ。村から逃げ出すのは良くあることらしいな。
「えぇ、そいつは分かっていますだぁ。 何とか生き延びてみますよぉ」
「分かっているのなら良い。 コイツはこの迷宮の〈登録証〉だ。 最初は木札で、一階層を抜けたら鉄札になる。 まあ、関係ないか。 もし〈化け鼠〉を狩れたら買い取りは向こうの窓口へ行けよ」
俺達は早速〈二級の迷宮〉へ潜ってみることにした、ここの迷宮の名前は何のひねりも無く、〈カカラッゼの迷宮〉と言うらしい。
町から歩いて三十分くらいの所に、迷宮の入り口がポッカリと空いている、入り口には見張りの兵士が三人立っていた、俺達はそれぞれ木札を見せて迷宮へ入っていくが、〈妻〉を見る兵士の目が気になるな。
迷宮に潜る女性の中では、〈妻〉は良い女なんだろう。
若返ったため、まだあどけない顔のくせに、ムッチリとした体つきだからな。
少しはいるのかも知れないが、若くてまともな女は一人も見なかった、いた女性は何と言うか
負けず
〈妻〉の体をジロジロ見ていたし、何人かは俺の尻を見ていたよ。
迷宮に潜っている女性達は、驚くほどゴッツイ体をしているか、毛皮のローブを
俺と〈ラトさん〉は鉄の鎧を、〈妻〉と〈ミトさん〉は毛皮の服のままで、迷宮に入っていく。
入っても周りには誰もいない、迷宮に潜る人間が少ないってことだ、本当に直ぐ死ぬんだろう。
俺と〈妻〉も村の迷宮が一級だから何とかなったけど、二級だったらもうこの世にいないのは火を見るより明らかだ、俺の尻が
ねっとりとした視線が、顔や尻をなぞってくるから、ゾッとしてしまった、〈妻〉も心配だが自分の心配も必要なんだよ。
周囲に気を配りつつ、ごつごつとした洞窟を慎重に歩いていくと、〈化け鼠〉が
どうしてと思うほど、憎しみでの
魔物がどこから来るのか分からない、湧いて出るってことだろう。
二匹の〈化け鼠〉は少しだけ知恵があるのだろう、それぞれ同時にガッと左右の壁を蹴り、俺達へ跳びかかってくる、ただ壁を蹴るのは予想出来た動きだ、俺と〈ラトさん〉はそれぞれ近い方の〈化け鼠〉に槍先を向けて対処する。
〈妻〉は俺の後ろに隠れながらも、〈化け鼠〉に槍を向けているが、〈ミトさん〉は〈ラトさん〉の後ろに回るだけで精一杯のようだ、でもこれは作戦の範囲内だからそれほど問題ではない。
俺の方へ跳んできた〈化け鼠〉は、「ギュ」と鳴き素早い身のこなしで槍先を何とか交わしたが、無理やりな動きのため体勢を大きく崩している、そこを〈妻〉の槍が
足を引きずりながら、また壁を蹴ろうとした〈化け鼠〉の背を、俺は余裕を持ち突き刺すことが出来た。
怪我を負って素早い動作が出来ないくせに、また壁を蹴ろうと
〈ラトさん〉の方も同じ様に、槍を交わされてしまい、〈ラトさん〉の足に噛みつこうとしたらしいが、丈夫な歯をもってしても鉄の鎧には歯が立たなかったみたいだ。
〈ミトさん〉が浅くだけど腹を突きさして、〈ラトさん〉が今止めを刺そうとしている。
〈カカラッゼの迷宮〉を
二級の迷宮でも一階層なら何とかなる、後は〈化け鼠〉がどれほどの稼ぎになるかにかかっているな。
〈仲立ち所〉の窓口に、早速狩ったばかりの〈化け鼠〉を二匹納品すると、百シリンで買い取りをしてもらえた、〈シリン〉とはくすんだ黄色の硬貨だ、混じりが多い銅貨なんだと思う。
二十シリンで、朝夕二食が提供される平均的な宿に泊まれるらしいので、かなりの儲けだろう。
「うわぁ、〈化け鼠〉が二匹で、こんなに稼げるんだ。 それなのに、あの村のヤツラはイモしかくれなかったわ」
〈妻〉も
儲けは、〈ラトさん〉と五十シリンずつ半分に分けて、木賃宿から普通の宿に変わることにした、夫婦で一部屋にしたからゆっくり出来るはずだ。
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