第240話 ロートル扱い

「ああ。あいつのガキさ。シエルグリス自慢のエースだ」


 ははぁ~っとフランベール達はどこか意外そうな顔をした。

 俺もそうだった。

 正直に言うと、あのミオンが男と子作りするとは思えなかったのだ。

 想像できないというか、信じられないというか。


「ネオ……久しぶりだな」


 声を掛けたのはまさかのカーティスだった。

 どうやら初対面ではないらしい。

 だがネオはカーティスに対して露骨に顔を険しくした。


「貴様かカーティス。僕を見下しに来たのか?」


 ぇえ!?

 なんだいきなり!?

 凄く険悪な態度とセリフなんだけど!?


「そんな訳ないだろう。腕は上がったのか?」


「当然だ。その辺の凡人と一緒にするな。僕は天才なんだからな」


 なんか自分で天才とか言ってるよこの子。

 俺みたいだな。


「ふ……相変わらずだな」


 言うカーティスは慣れてるような反応だ。

 何度か手合わせしたことがあるんだろう。

 

「馬鹿にして! 僕に勝ったからって調子に乗るなよカーティス・フォルス! ここでリベンジしてやろうか!」


 なんかミオンより癖が強いな。

 でも自分で天才って言うだけあって纏ってるオーラは本物だ。

 この少年は口だけじゃなさそうだ。


「バカ者。主君の御前だぞ。少しは考えてものを言え」


「くっ!」


 カーティスに言い負かされて歯を食い縛るネオ。

 今にも抜刀しそうな勢いだったが、さすがに主君レイゼの前ではそれを抑えたようだ。

 見た目の割に血気盛んだ。

 若さ故か。いや彼の場合は性格かもしれない。


「姉さん……カーティスとネオくんって」


「ああ。昔ここの練兵場でやり合ったことがあってな。なかなか良い勝負だったんだが、あいつはカーティスに一歩及ばなかった」


 やっぱりそうだったのか。

 ライバル心剥き出しだもんなネオくん。

 でもカーティスと良い勝負をするなんて、やっぱり凄まじい実力者だ。


「カーティスと良い勝負するなんて凄いな。ネオくんって何歳?」


「15だ」


「若っ!」


「大したもんだろ? でも満足してねーんだよアイツは」


「満足してないなら伸びそうだね。優秀な騎士が生まれて良かったな姉さん」


「そうだな……問題はミオンがなぁ……」


「え? なに?」


「いや……なんでもねぇ」


「?」


 なんだ?

 問題はミオンがとか聞こえたけど?

 ミオンさんがどうかしたのかな?


「ねぇねぇネオ。カーティスカーティスって言ってるけど、うちのお父さんの事は聞いてないの?」


 割り込んで来たのはグロリアだった。

 言われたネオは俺の方を見て露骨に馬鹿にしたような目付きになる。


「聞いている。カーティスに勝ったっていうこの黒騎士だろう? くだらん。どうせカーティスの事だ。自分の父親だから手加減でもしたんだろう」


「いや、していない」っとカーティス。


「ふん……口ではなんとでも言えるな。どのみち僕はこんなロートル騎士に興味はない」


 ロートル扱いされた!

 まだ17歳なのに!

 ちょっとショック!


「僕が勝ちたいのは貴様だ。カーティス!」


「悪いがオレはお前など眼中にない。オレが勝ちたいのは父さんだ」


「なんだと! ならば僕がそいつを倒してやる! そうすれば貴様は僕を見ずにはいられないだろう!」


 なんか誤解されそうな言い方してるよこの子。

 

「女王陛下! しばし御時間を頂きたい」


「なんだ? ゼクードとやるのか?」


「お願いします」


「ふーん、まぁオレは構わねぇが……どうするゼクード?」


 えー、帰って来たばっかりで疲れてんのに……


「カーティスに勝ったなどとほざく……手加減してもらっただけの雑魚が。まさかやらんとは言わんよなぁ?」


 この子どんどん口が悪くなってる。

 親の顔が見てみたいな。


「……いいぜ? 帰って来たばかりで疲れてるけど、君にはちょうど良いハンデだろう」


「なっ!?」 

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